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韓国の暮らし 4【赤ちゃん・子育て・教育・学校・受験】

韓国の大学受験(大学入試)は日本以上の受験戦争!

投稿日:2023年2月16日 | 最終更新日:2024年7月17日

韓国は日本以上の学歴社会です。どの大学を出たかで人生が決まると言っても過言ではありません。そのため、大学受験は人生をかけた戦いになります。大学受験のために、小さいころから塾に通い、高校生になると睡眠時間4時間で毎日勉強漬けです。

ドラマのひとコマです。本当は無邪気に遊びたい年頃ですが、夜遅くまで塾通いです。韓国の悲しい現実です。

目次 ▼

1 韓国人の大学進学率は世界一

OECD国家中、どこが大学にたくさん行くか?
左から、韓国、カナダ、イギリス、アメリカ、OECD平均、日本、ドイツ、イタリア、

OECDの資料では、韓国が断トツ1位の68%です。この68%という数字ですが、恐らく4年制の大学のみの数字です。同じように、日本の37%もそうだと思います。日本も短大まで含めると50%くらいあるそうですから。
韓国では2年生の大学まで含めると大学進学率は80%になります。

韓国は国民みんなが大卒

大卒でないと社会に認められない、そんな風潮もありますし、何より、高卒と大卒では初任給が違います。 更にそのあとの生涯年俸がぜんぜん違います。 もちろん同じ大卒でも、一流大卒かそうでないかでもぜんぜん違います。 ですので、皆、無理してでも大学を目指します。

韓国には日本のような専門学校はない

あるのは4年制の大学と2年制の大学(専門大学)です。 専門大学は、教養の勉強を省いて専門だけを重点的に勉強します。 日本の短大のようですが、看護とか機械とか専門を重点的に勉強するので、その意味では日本の専門学校に近いです。 しかし専門大学に行くのは、入試の試験の点数が足りなくて4年制の大学に行けなかった人たちで、はじめから専門大学を目指す人はほとんどいません。
また、美容師や調理士など、国家資格を目指す人は大学とは別に学院(塾)に行きます。

2 大学入学に反映される要素

基本は4つの要素の総合評価です。

➀ 大学修学能力試験(대학수학능력시험)

略して「スヌン(修能・수능)」、日本で言う「センター入試」のような全受験生の一斉入試テストです。

➁ 学校生活記録簿(학교생활기록부)「教科内申」

高校生活全般の記録、いわゆる「内申」です。 「学生簿」「生記簿」とも言います。
「内申」はふたつの項目に分かれますが、「教科内申」は高校の学業成績による内申点です。

➂ 学校生活記録簿「非教科内申」

高校の「内申」のうち、奉仕活動や資格取得、コンクール受賞など、学業以外の高校生活全般での内申点です。

➃ 大学別考試

大学ごとに行われる「試験」で、主に「論述試験」です。

3 大学の募集のしかた

大きくふたつの方法があります。

➀ 随時募集

一斉テストである「修能」とは関係ない募集のしかたです。 たいていは「修能」の前に募集します。 大学にとっては、早く募集することで優秀な生徒を確実に集められるというメリットがあり、生徒にとっても早く入学が決められるというメリットがあるため、今ではこの「随時募集」が全体の77%になっています。
「随時募集」は「修能」前に行われることが多く、事実上「内申点」で入学が決まります。
「内申」のどの部分を重視するかによって、「内申」すべてを重視する「学生簿総合選考」と「内申」のうち「教科内申」のみを見る「学生簿教科選考」、大きくふたつがあります。
他に「特技者選考」と言って、スポーツや音楽、あるいは語学などの優秀者を募集する選考もあります。 日本で言う「特待生」制度です。

➁ 定時募集

「修能」の結果と「内申点」を加味した募集です。 以前はほとんどの募集が「定時募集」でしたが、今では「随時募集」の比率が上がり、「修能試験」の重要度はどんどん下がっています。

4 大学に入るためには高校の内申点が重要

大学選考比重 変化推移
赤線が「学生簿教科」、高校の「教科内申」選考
青線が「学生簿総合」、高校の「教科内申」と「非教科内申」選考
緑線が「修能」、全受験生の一斉入試テスト
紫線が「論述」、大学ごとの試験

以前は「修能」の比率がもっと高かったのですが、一発入試は弊害が多いということで、このごろは、奉仕活動を含めた高校生活での内申点の比重が上がり、修能の比率はどんどん下がっていて、「修能選考(入試)」の比率は20%にまで下がりました。

高校生活の「内申」は担任の先生が点数をつけるので主観でどうにでもなる

そのため、表向きは禁止されている『寸志』と呼ばれる事実上の賄賂が隠れて渡されています。 金持ちがお金で点数を買っています。

5 内申点のための奉仕活動

ほとんど義務です。やらなければなりません。奉仕活動自体は中学生の時からやっていますが、高校でも1年生の時からやります。

奉仕活動リストの中から選ぶ

一般的には、先生から渡されるリストから選びます。
地域の清掃活動(掃除)とか、療養院(老人ホーム)の手伝いとか、貧しい家庭に食べ物を配達するとかです。
療養院(老人ホーム)の手伝いは大変なので点数が高く、清掃活動は楽なので点数が低いです。 活動の時間は主に週末ですが、夏休みなどにまとめてやることもできます。 どの「奉仕活動」も、場所と時間が指定されているので、通っている学院(塾)の時間などを考慮して自分で選びます。

自分で探してもかまわない

例えば、つてやコネを使って大学の教授の手伝いに行き「こんな論文書きました」とか、そんな奉仕活動もあります。 すごい論文書いて、奉仕活動で高得点をもらったりします。
しかし、この論文自体が、実は自分で書いたものではなくお金で解決したものだったということが発覚して問題化するケースもあります。 「お金がなくて学院(塾・予備校)に行けなくても他のことで点数を稼げるように」という趣旨も含まれていた奉仕活動ですが、結局金持ちが金に物を言わせて高得点を稼ぐ道具になっています。

6 高校での学業成績、つまりテストの点数が「内申」に大きく影響を与える

「随時募集」が増え、高校のテストの点数で『行ける大学』が決まると言っても過言ではありません。

「内申点」を上げるために学院(塾・予備校)に通う

上位校を狙うなら、高校のテストはオール100点でなければなりません。 うっかりミス、ケアレスミスが命取りになります。
そのため、学校で習う前に、学院(塾・予備校)でしっかり習って、模擬テストを何回も受けておきます。 そして学校では万全の状態で授業を受けテストに臨みます。
それは、例えば、中学1年生の時のテストを中学3年生が受けると簡単に感じますよね。 はじめて勉強した1年生の時には難しく感じても、そのあと何度も練習して、その先のことを学習すると、以前に学習したことは簡単に感じるようになります。 それと同じ事をします。
それを「先行教育」と言います。 学校で習う前に学院(塾・予備校)で予め習っておくことです。

韓国では「先行教育」は常識

高校1年生で学ぶ内容は、遅くとも中学3年までに完璧にしておかないと上位校合格は望めません。 ですので、皆、学院(塾・予備校)で、あるいは家庭教師をつけて先行教育をします。
高校に入ってから「先行教育」では遅すぎます。 小学校に入る前から先行教育です。 小学校入学時には、ハングルの読み書きはもちろん、九九も言えるようにしておきます。 いい大学を目指すなら、常に1年~2年先の学習内容を先に済ませておかなければなりません。

7 放課後には送迎車で学院に直行

ソウルだけでなく、地方でも、地域のお金持ちエリアだと、下校時の学校前には学院の送迎車やバスがずらりと並びます。送迎の車は黄色いので目立ちます。小学校の場合はテコンドー道場の車もありますが、ほとんどが学院の車です。

教育熱の高いエリアには学院の集まっている所がある

子供たちは、夜10時まで勉強です。 黄色い送迎用のバスが何十台も待機しています。 また、この時間に、親の迎えの車がたくさん来るので、付近の道路は大渋滞となります。

ソウルでは条例で「学院や家庭教師は夜10時まで」と決められている

あまりに深夜まで授業を行う学院(塾)が多いため条例を定めました。 そのため夜10時にほとんどの学院は授業を終えます。 しかしシャッターを閉めカーテンを閉め、こっそりと授業をやっている学院も少なくありません。 もし摘発されて罰金を科せられても生徒たちが払う授業料のほうがずっと高いので、経営にはまったく問題ないからです。

8 受験生は「四当五落」

「4時間寝たら合格、5時間寝たら落ちる」という意味です。
日本も昔は同じ諺があったみたいですね。

寝る間も惜しんで勉強するのが韓国の青少年たち

夜10時からは学院(塾)で出た宿題をするため、近くにある24時間営業の自習室(読書室)に行く子も多いです。 深夜の2時ころまで勉強します。
深夜まで勉強するとなるともちろん眠いので、カフェインたっぷりのスポーツ飲料やカフェインたっぷりのコーヒー、あるいは特製タピオカミルクティー(버블티・バブルティー)を飲みながら眠気をこらえて勉強しています。
深夜2まで勉強して家に帰ってちょっと寝て、朝7時には学校です。 韓国の受験生は一日の睡眠時間4時間の生活を3年間続けます。

ゆっくり食事をする時間もない

学院の授業前、授業後にコンビニなどで済ませます。

学院が終わった時刻や、食事休憩時刻に、学院に通う子供たちはコンビニに駆け込み食事をします。 ほとんどの子が、おにぎりやインスタントラーメンなので、食生活がぼろぼろです。 親が貧乏で満足に食事のできない子供たちとほとんど同じレベルです。

日本のランドセルはお金持ちの象徴

ドラマのいち場面です。左の子がしょっているのは日本のランドセルです。
ソウルの江南エリアでも、特にお金持ちの集まる大峙洞(대치동)エリアの子供、という時、何人かに1人、ランドセルの子が出てきます。 ソウルのお金持ちたちの間で日本のランドセルが流行ったことがあり、今でもランドセルの子がいます。 そのため、ランドセルは、江南に住むお金持ちの子供の『ひとつの象徴』のように、今でもいろいろなドラマで使われています。 一般の韓国人はランドセルの子を見て「ソウル江南のお金持ちの子」と認識します。

日本で言う「早慶以上」を目指すなら最低このくらいは必要

一流学院と言われるような学院は、誇張ではなく、食事の時間も取れないくらい、缶詰でみっちり授業をして、そして、寝る時間も取れないくらい、宿題がたくさん出るそうです。

早慶を目指すほどではなくても、ある程度のレベルの大学に行こうと思ったら、少なくとも週に何日かは、学院に通ったり、家庭教師をつけたりして勉強します。
最近の高校生たちは、土日は『10 to 10(Ten To Ten)』と言われる、午前10時から午後10時まで缶詰で勉強する学院に通います。 ちょっとした流行です。 地方の高校生たちも、土日はソウルで缶詰になります。 皆、自ら缶詰になります。

子供のいる、私の友達たちも皆そうです。 小学生の時からです。 子供に何もさせていない友達はいません。

9 超お金持ちは「入試コーディネーター」を雇う

SKYキャッスル(SKY캐슬)というドラマがありました。2018年11月から2019年2月にかけて放送されました。

SKYは、ソウル(Seoul)大学、高麗(Korea)大学、延世(Yonsei)大学の頭文字をつなげたものです。日本で言うと、東京大学、早稲田大学、慶応大学です。キャッスルはCastle、お城です。まさに空にそびえる手の届かないお城です。一般人にとってのイメージをよく表したタイトルです。

SKYキャッスルは実在の入試コーディネーターをモデルにしたドラマ

入試コーディネーターは、受け持った受験生をしっかりと把握し、どの科目をどこで学べばいいか、学院選びから内申点稼ぎ、そして生活のすべてを管理します。 有名コーディネーターだと年間費用が1億ウォン以上です。 為替レートは平均すると100円=1000ウォンですから、日本円にすると1千万円以上です。
それでも「ぜひうちの子を」という親が多く、誰を引き受けるかはコーディネーターが選びます。
受験生にとって入試コーディネーターは絶対的な存在になります。 親よりも入試コーディネーター頼りです。

入試コーディネーターの存在が全国民に知られるようになった

それまで全国的には知られていなかった、江南の一流と言われる学院の厳しさも知られるようになりました。 過酷な受験の現場、スパルタの学院などが次々に出てきました。
番組制作者たちは、恐らく韓国の大学受験の問題点をさらけ出し、国民全体で考えるきっかけにする、という批判的な立場でこの番組を作ったのだと思いますが、受験生を持つ親たちの反応は、本当にここまでやっているのかという驚きと、私もお金があったら自分の子供にこのくらいさせてあげたいというものでした。

10 子供の頃から競争の毎日

ストレスいっぱいの生活です。心の余裕がありません。

少し前になりますがOECD加盟国の「青少年の生活満足度調査」で韓国は最下位

1位のオランダが満足度94.2%、平均が84.8%なのに対し、韓国は53.9%と断トツのビリです。 韓国の青少年は、およそ2人に1人しか満足していないという結果です。

中学生から高校生と学年が上がれば上がるほど親の話は学校の成績の話ばかり

そのことも大きなストレスになります。
また、韓国では、顔や体型、背の高さなど外見が重視されるので、大人になるにつれそのことに対するストレスもとても大きくなります。 そんなストレスいっぱいの中でひたすら勉強ばかりをしなければななりません。

「人生で一番大切なものは何ですか」という質問に

中学生までは「家族」と答える人が多いのに、学年が上がれば上がるほど「お金」と答える割合が多くなり、高校3年生では「お金」と答える人が一番多くなります。

11 学校改革が行われた

あまりに点数点数の学校生活になっている、人間らしい学校生活をということからです。
日本式にいうと「ゆとり教育」です。

今、小学校では一切テストはせず点数をつけない

中学校でも一時テストをすべてやめましたが、生徒たちがあまりに勉強しなくなったので、中学では復活しました。
高校は単位制になりました。 単位制と言っても、実際はほとんどの生徒が単位もらって卒業しています。
すべては、テストテスト、点数点数、という受験中心の学校生活を変えるためです。

しかし大学入学のシステム自体は変わっていない

高校の内申点が重要なことも変わりません。 つまり、これまで受験に対して学校がある程度やってくれていたことを学校は何もしなくなっただけです。
結果として、今まで以上に学院(塾・予備校)や入試コーディネーター頼りになりました。 そうでなくても、韓国では受験システムがころころ変わめため専門家の助言が必須です。
結局、学校改革は、お金のあるものとないものの格差が広がっただけ、という批判も多いです。

12 学業と余暇のバランスが必要

そう言われるようになりました。子供たちの基本的な権利を守るべきだ、子供は勉強する機械ではない、最近はそう言われるようになりました。
また、中高生たちも、学業と余暇のバランスが必要だと訴えるようになっています。

のんびりしていたら落ちこぼれるだけ

大人になって自分が困るだけです。 嫌でも何でも頑張るしかないのです。 しかしこのような激しい受験競争にはとてもついていけない、そんな子も出てきます。

韓国で落ちこぼれたら韓国で生活するのは困難

大学入試は高校生たちにとって「背水の陣」です。

本当に落ちこぼれたら親が子供のことを思って海外に出るケースも多い

ビザが比較的出やすく暮らしやすいと言われるオーストラリアやニュージーランド、カナダへ行きます。 あるいは、勉強はだめだからせめて英語だけでも、そう考えて英語圏に留学するケースも多いです。
しかしその国の生活に慣れると、子供たちは「韓国には戻りたくない」と言いだすそうです。 中学生以上だとほぼ100%韓国には戻らないと言うそうです。 カナダにある「韓国系の留学センター」の人が言っていました。 カナダの生活に慣れたら韓国の生活にはもう適応できなくなります。 そのままカナダで大学まで行けるよう親はサポートするしかなくなります。

13 以前のような定時募集(修能試験)の入試に戻ることが決まった

今の大統領のユンソギョル(윤석열)大統領は、大学受験のシステムを修能試験(共通テスト)の点数に内申点を加味して入学を決める定時募集に戻すと方針転換を発表しました。

内申点で大学に行く随時募集ではシステムの悪用が多く公平性に問題がある

学力レベルの高いソウルの高校より、学力レベルの低い地方の高校のほうが内申点が高く出ます。 また地方の高校を優遇する制度があるため、ソウルの高校から地方にわざわざ転校するケースもあります。

学院(塾)通いは家計の大きな負担

韓国では、小学校、中学校、高校、大学以外にかかる教育費を私教育費と言います。 塾や予備校、家庭教師などにかかる費用です。 その私教育費用は、ソウルだと毎月高校生ひとり当たり200万ウォン以上です。 この費用負担が結婚しても子供を産まない原因のひとつになっています。

修能試験は学校でちゃんと勉強していればどの問題も解けるようにする

学院(塾)通いをしなくても高得点を取れるようにすることで過熱する学院(塾)通いを抑え込もうとしています。

韓国の大学受験システムはコロコロ変わる

大統領が変わるごとに代わりますから、この点でも韓国の受験生は大変です。

13 修能(入試)の日の風景

14 韓国の高校生活

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監修者

監修者の写真

<出身大学>

新丘大学家庭教育学部

<略歴>

ソウル出身。韓国語教育が専門分野。2006年に来日し、2011年より韓国語教室ハングルちゃんの共同経営者兼主任講師。 生徒たちが積極的に参加しやすい雰囲気を作り、能力を最大限に引き出す指導スタイルが評判。

監修者の写真

内田 昌弘 (うちだ まさひろ)

韓国語教室ハングルちゃん代表

<資格>

通訳案内士韓国語(国家資格)
日本語教育能力検定
高等学校と中学校教員1種免許状(数学)

<出身大学>

京都大学農学部卒業

<略歴>

東京生まれ千葉県育ち。韓国在住(歴)15年、1996年から2006年までの11年間は、韓国最大規模の語学学校(YBM学院)にて日本語部門の教授部長。2011年6月に韓国語教室ハングルちゃんをスタート。