韓国の大学入学試験日(修能・スヌン)の風景や家族たち。

目次
- ○ 日本の大学入学試験の「共通テスト」に当たる試験は「修能(수능・スヌン)」と言います。
- ・毎年、11月中旬の平日に行われます。
- ・国の大事なイベントと言ってもいいくらい、受験生以外の人たちも、とても気をつかいます。
- ・試験は、日本の共通テストと同じ、マークシート式です。
- ・試験の出題自体は、年々やさしくなっています。
- ・最近は、高校の内申点のみで進学する人も増え、「修能」が全受験生一発勝負ではなくなっています
- ○ 受験生は、試験会場まで、ひとりで来たり友達同士で来る人も多いですが、家族がついて来ることも少なくありません。
- ・受験生が親の期待を一身に背負っていることが多いです。
- ・付き添いで来た家族は試験会場に入れませんが、うちには帰らず試験が終わるまで、試験会場の外で必死に祈る姿が見られます。
- ・同じ高校の先輩たちを応援に来た後輩たちの姿が見られます。
- ・試験会場を間違えたり、乗るバスを間違えた受験生は、警察がパトカーや白バイで緊急輸送します。
- ・最近は、携帯電話の持ち込みが問題になります。
- ○ 「修能」が近づくと、試験を受ける受験生には試験でいい点数がとれるように、家族や、親戚、先輩や後輩や友人達がプレゼントをします。
- ・「あめ」とか「もち」をあげるのが一般的です。
- ・フォークをあげることもあります。フォークは「修能」の象徴のように、よく使われています。
- ・韓国には有名な精神安定の薬があるのですが「修能用」の特別なものが出ています。
- ・この時期だけの、ポテトチップスの特別バージョンです。
- ・お菓子でもチョコでも「修能」の時期は、み~んな、なんでも『대박기원(大当たり祈願・高得点祈願)』です。
- ○ 試験の日には、わかめスープは食べません。
- ・ワカメはぬるぬるしていて滑るからです。
- ・試験の日にわかめスープを食べないのは、本人だけでなく、両親や兄弟、あるいは、その受験生を応援している人も同じです。
日本の大学入学試験の「共通テスト」に当たる試験は「修能(수능・スヌン)」と言います。
正式名称は「大学修学能力試験(대학수학능력시험)」、略して「修能試験(수능시험)」「修能(수능)」です。
毎年、11月中旬の平日に行われます。
以前は、12月に行われましたが、雪が降って交通が麻痺することがあり、11月に行われるようになりました。
国の大事なイベントと言ってもいいくらい、受験生以外の人たちも、とても気をつかいます。
受験日は、受験生のために、会社も時差出勤に協力しますし、受験会場近くでは、騒音を出さないために、工事も中止し、飛行機やヘリコプターの飛行も禁止です。
全受験生が、平等に、公平に、そして、落ち着いて試験を受けられるように、すべての国民が協力します。
試験は、日本の共通テストと同じ、マークシート式です。
韓国では、選択肢のある試験を「客観式」といい、選択肢のない試験を「主観式」といいます。「修能」はマークシートですから客観式です。
試験の出題自体は、年々やさしくなっています。
高校教育の範囲を逸脱した、難しい問題は、出なくなっています。韓国では、学校以外の塾や予備校、家庭教師などにかかる教育費(私教育費と言います)が、とてもかかることが問題となっています。
塾通いをしなければ、いい大学には行けないというのは常識です。そんな風潮を改めるため、ちゃんと高校で勉強していれば、「修能試験」対策は十分だとするためです。
出題がやさしくなり、平均点も上がるため、難関大学に入るためには、全科目、満点近い点数が要求されます。ケアレスミスは許されません。それはそれで大変なことです。
最近は、高校の内申点のみで進学する人も増え、「修能」が全受験生一発勝負ではなくなっています
一発勝負に対する批判もあり、今では、内申点の比率が高くなっています。
受験生は、試験会場まで、ひとりで来たり友達同士で来る人も多いですが、家族がついて来ることも少なくありません。
受験生が親の期待を一身に背負っていることが多いです。
お父さんが息子の肩をたたいています。
付き添いで来た家族は試験会場に入れませんが、うちには帰らず試験が終わるまで、試験会場の外で必死に祈る姿が見られます。
試験会場で祈らず、普段通っている教会や寺で祈ったり、ご利益があると言われる場所で祈る人も多く、何も祈らない親はいないと言ってもいいほどです。
でも、これは、受験生には、すごいプレッシャーです。試験中に倒れる人も出ますし、あまりのプレッシャーに自殺する高校生も出ます。
同じ高校の先輩たちを応援に来た後輩たちの姿が見られます。
プラカードを持ってきて応援することが多いです。
試験会場を間違えたり、乗るバスを間違えた受験生は、警察がパトカーや白バイで緊急輸送します。
これは、日本では、ありえない光景かもしれませんが、韓国では、警察も公務員ですから、国民の大事なイベントに最大限協力する義務があると考えます。もちろん、いたずらや、バスに乗るのが面倒で警察を呼ぶ、そんな、悪い受験生はいません。
最近は、携帯電話の持ち込みが問題になります。
試験会場に携帯電話の持ち込みはできません。しかし、母親の携帯電話が、お弁当といっしょに間違ってかばんに入ってしまい、その携帯電話が鳴ったことで退室となる受験生が、毎年、必ずいます。
「修能」が近づくと、試験を受ける受験生には試験でいい点数がとれるように、家族や、親戚、先輩や後輩や友人達がプレゼントをします。
修能プレゼント(수능선물)と言います。
「あめ」とか「もち」をあげるのが一般的です。
どうして「あめ」や「もち」をあげるのか、意味は、わかりますよね。よく、くっつくようにです。「合格した」「受かった」という時に、韓国では「くっついた(붙었다)」と言います。もちは修能プレゼントの定番です。
フォークをあげることもあります。フォークは「修能」の象徴のように、よく使われています。
フォークで「突く(찍다)」と、マークシートに印を「つける(찍다)」が、韓国語では同じ発音なので、迷った時に選択肢をよくつけられるように(勘が当たるように)、という意味でフォークをプレゼントします。
しかし、最近は、修能プレゼントも、いろいろな物が出ています。
韓国には有名な精神安定の薬があるのですが「修能用」の特別なものが出ています。
「修能丸」と言います。これを飲んで、落ち着いて、いい点数取れるようにと贈ります。ちょっと高価ですが、実用的で人気のプレゼントです。
この時期だけの、ポテトチップスの特別バージョンです。
『대박(テバク)』というのは訳すのが難しいですが、パチンコなどで大当たりして玉がジャラジャラ出るような感じです。試験で『대박』と言うのは、マークシートを勘良く印をつけたおかげで、正解がジャラジャラ出て、ものすごく高得点を得るような感じです。そんな『대박기원(大当たり祈願・高得点祈願)』です。
お菓子でもチョコでも「修能」の時期は、み~んな、なんでも『대박기원(大当たり祈願・高得点祈願)』です。
試験の日には、わかめスープは食べません。
韓国では、誕生日には「わかめスープ」ですが、試験の日は反対です。
ワカメはぬるぬるしていて滑るからです。
試験で滑らないよう食べません。日本でも、受験生の前で「すべる」は禁句ですよね。
試験の日にわかめスープを食べないのは、本人だけでなく、両親や兄弟、あるいは、その受験生を応援している人も同じです。
もちろん、そんな迷信を本気で信じている人はいませんが、でも、やっぱり、頑張っている受験生が近くにいると、気持ち的にそうなりますよね。