韓国の、今の学校教育、大学受験について、韓国人視点で紹介します。

目次
- ○ 大学に入るためには高校の内申点が重要です。
- ・奉仕活動と言うと
- ・内申は、担任の先生が点数をつけるので、主観でどうにでもなります。
- ○ 「学生部教科」の比率が高いため、高校でのテストが、大学入学に大きく影響を与えます。
- ・それが「先行教育」が行われる理由です。
- ○ ソウルでは、条例で「学院や家庭教師は夜10時まで」と決められています。
- ・寝る間も惜しんで勉強するのが、韓国の青少年たちです。
- ・寝る時間もないくらいですから、食事の時間はありません。
- ・ドラマのいち場面ですが、左の子がしょっているのは日本のランドセルです。
- ○ 放課後には送迎車で学院に直行します。
- ・教育熱の高いエリアには、学院の集まっている所があります。
- ・日本で言う「早慶以上」を目指すなら、このくらいが必要、ということになります。
- ○ SKYキャッスル(SKY캐슬)というドラマがあります。
- ・SKYキャッスルは、実在の入試コーディネーターをモデルにしたドラマです。
- ・入試コーディネーターの存在が全国民に知られるようになりました。
- ○ 韓国では、学校でも子供たちは競争です。心の余裕がありません
- ・少し前になりますが、OECD加盟国の「青少年の生活満足度調査」では、韓国は最下位でした。
- ・中学生から高校生と、学年が上がれば上がるほど、親の話は学校の成績の話ばかり
- ・「人生で一番大切なものは何ですか」という質問に、
- ○ あまりに点数点数の学校生活になっている、人間らしい学校生活をということから
- ・日本式に言うと「ゆとり教育」です。
- ・しかし、大学入学のシステム自体は変わっていません。
- ○ 学業と余暇のバランスが必要です。
- ○ しかし、のんびりしていたら、実際は落ちこぼれるだけです。
- ・韓国で落ちこぼれたら、韓国で生活するのは大変です。
- ・オーストラリアやニュージーランド、カナダへ行きます。
- ○ その国の生活に慣れると、子供たちは「韓国には戻りたくない」と言いだすそうです。
- ・大学まで行こうと思ったら、金銭的にも移民してしまったほうが得です。
大学に入るためには高校の内申点が重要です。
赤線が「学生部教科」、高校で行われる試験による内申点
青線が「学生部総合」、高校生活での内申点(奉仕活動も入ります)
緑線が「修能(수능)」、日本で言う「センター入試」のような、全受験生の一斉入試テスト
紫線が「論述(논솔)」、大学によって行われる2次試験のようなもの
以前は、「修能(수능)」の比率がもっと高かったのですが、一発入試は弊害が多いということで、このごろは、奉仕活動を含めた高校生活での内申点の比重が上がり、修能の比率はどんどん下がっています。
奉仕活動と言うと
老人ホームを訪問したり、地域の清掃活動などが思い浮かぶと思います。もちろん、そのような奉仕活動もありますが、つてやコネを使って、大学の教授の手伝いに行き、こんな論文書きました、とか、そんな奉仕活動もあります。すごい論文書いて、奉仕活動で高得点をもらったりします。
しかし、この論文自体が、実は、自分で書いたものではなく、お金で解決したものだったということが発覚して問題化するケースもあります。「お金がなくて学院(塾・予備校)に行けなくても、他のことで点数を稼げるように」という趣旨も含まれていた奉仕活動ですが、結局、金持ちが金に物を言わせて高得点を稼ぐ道具になっています。
内申は、担任の先生が点数をつけるので、主観でどうにでもなります。
そのため、表向きは禁止されている寸志と呼ばれる事実上の賄賂が隠れて渡されています。金持ちが金で点数を買っています。
「学生部教科」の比率が高いため、高校でのテストが、大学入学に大きく影響を与えます。
上位校を狙うなら、テストはオール100点でなければなりません。そのため、学校で習う前に、学院(塾・予備校)でしっかり習って、模擬テストを何回も受けておきます。そして、学校では万全の状態で授業を受け、テストに臨む必要があります。
それが「先行教育」が行われる理由です。
高校1年生で学ぶ内容は、遅くとも中学3年までに完璧にしておかないと、上位校合格は望めません。ですので、皆、学院で、あるいは家庭教師をつけて、先行教育をします。
小学校に入る前から先行教育です。入学時には、ハングルの読み書きはもちろん、九九も言えるようにしておきます。いい大学を目指すなら、常に1年~2年先の学習内容を、先に済ませておかなければなりません。
ソウルでは、条例で「学院や家庭教師は夜10時まで」と決められています。
そのため、夜10時に、ほとんどの学院は授業を終えます。しかし、シャッターを閉め、カーテンを閉め、こっそりと授業をやっている学院も少なくないそうです。
また、学院で出た宿題をするため、夜10時からは、近くにある24時間営業の自習室(読書室)に行く子も多く、
寝る間も惜しんで勉強するのが、韓国の青少年たちです。
深夜まで勉強するとなると、もちろん眠いので、カフェインたっぷりのスポーツ飲料や、カフェインたっぷりの特製タピオカミルクティー(버블티)を飲みながら、眠気をこらえて勉強しています。
寝る時間もないくらいですから、食事の時間はありません。
学院の授業前、授業後に、コンビニなどで済ませます。
学院が終わった時刻や、食事休憩時刻に、学院に通う子供たちはコンビニに駆け込み、食事をします。ほとんどの子が、おにぎりやインスタントラーメンです。食生活がぼろぼろです。親が貧乏で満足に食事のできない子供たちとほとんど同じレベルです。
ドラマのいち場面ですが、左の子がしょっているのは日本のランドセルです。
ソウルの江南エリアでも、特にお金持ちの集まる大峙洞(대치동)エリアの子供、という時、何人かに1人、ランドセルの子が出てきます。お金持ちたちの間で、日本のランドセルが流行ったことがあるのですが、江南に住むお金持ちの子供の、ひとつの象徴のように、いろいろなドラマでランドセルが使われています。
放課後には送迎車で学院に直行します。
ソウルだけでなく、地方でも、地域のお金持ちエリアだと、下校時の学校前には、学院の送迎車やバスがずらりと並びます。送迎の車は黄色いので目立ちます。小学校の場合は、テコンドー道場の車もありますが、ほとんどが学院の車です。
教育熱の高いエリアには、学院の集まっている所があります。
子供たちは、夜10時まで勉強です。黄色い送迎用のバスが何十台も待機しています。また、この時間に、親の迎えの車がたくさん来るので、付近の道路は大渋滞となります。
日本で言う「早慶以上」を目指すなら、このくらいが必要、ということになります。
一流学院と言われるような学院は、誇張ではなく、食事の時間も取れないくらい、缶詰でみっちり授業をして、そして、寝る時間も取れないくらい、宿題がたくさん出るそうです。
早慶を目指すほどではなくても、ある程度のレベルの大学に行こうと思ったら、少なくとも週に何日かは、学院に通ったり、家庭教師をつけたりして勉強します。高校生になったら、土日は『10to10(Ten To Ten)』と言われる、午前10時から午後10時まで、缶詰で勉強する学院に通います。
子供のいる、私の友達たちも、みんなそうです。小学生の時からです。子供に何もさせていない友達はいません。
SKYキャッスル(SKY캐슬)というドラマがあります。
2018年11月から2019年2月にかけて放送されました。
SKYは、ソウル(Seoul)大学、高麗(Korea)大学、延世(Yonsei)大学の頭文字をつなげたものです。日本で言うと、東京大学、早稲田大学、慶応大学です。キャッスルは、Castle、お城です。まさしく、空にそびえる、手の届かない、お城です。一般人にとってのイメージをよく表したタイトルです。
SKYキャッスルは、実在の入試コーディネーターをモデルにしたドラマです。
入試コーディネーターは、受け持った受験生をしっかりと把握し、どの科目をどこで学べばいいか、学院選びから内申点稼ぎ、そして、生活のすべてを管理します。有名コーディネーターだと、年間費用が1億ウォン以上です。それでも「ぜひ、うちの子を」という親が多く、誰を引き受けるかは、コーディネーターが選びます。
受験生にとって入試コーディネーターは、絶対的な存在になります。親よりも入試コーディネーター頼りです。
為替レートは、平均すると、だいたい100円=1000ウォンです。
入試コーディネーターの存在が全国民に知られるようになりました。
それまで全国的には知られていなかった、江南の、一流と言われる学院の厳しさも、知られるようになりました。過酷な受験の現場、スパルタの学院などが次々に出てきました。
番組制作者たちは、恐らく、韓国の大学受験の問題点をさらけ出す、考えるきっかけにする、という批判的な立場で、この番組を作ったのだと思いますが、受験生を持つ親たちの反応は、本当にここまでやっているのか、という驚きと、私もお金があったら自分の子供にこのくらいさせてあげたい、というものでした。
韓国では、学校でも子供たちは競争です。心の余裕がありません
ストレスいっぱいの生活です。
少し前になりますが、OECD加盟国の「青少年の生活満足度調査」では、韓国は最下位でした。
1位のオランダが満足度94.2%、平均が84.8%なのに対し、韓国は、53.9%と、断トツのビリです。韓国の青少年は、およそ2人に1人しか満足していないという結果です。
中学生から高校生と、学年が上がれば上がるほど、親の話は学校の成績の話ばかり
そのことも大きなストレスになります。
また、韓国では、顔や体型、背の高さなど、外見が重視されるので、大人になるにつれ、そのことに対するストレスもとても大きくなります。そんなストレスいっぱいの中で、ひたすら勉強ばかりをしなければななりません。そのため、
「人生で一番大切なものは何ですか」という質問に、
中学生までは「家族」と答える人が多いのに、学年が上がれば上がるほど「お金」と答える割合が多くなり、高校3年生では「お金」と答える人が一番多くなります。
あまりに点数点数の学校生活になっている、人間らしい学校生活をということから
今、小学校では、一切、テストはしません。点数はつけません。そして、中学校でも、一時、テストをすべてやめましたが、生徒たちがあまりに勉強しなくなったので、また、復活しました。また、高校は、単位制になりました。単位制と言っても、実際は、ほとんど単位もらって卒業しています。
すべては、テストテスト、点数点数、という、受験中心の学校生活を変えるためです。
日本式に言うと「ゆとり教育」です。
しかし、大学入学のシステム自体は変わっていません。
高校の内申点が重要なことも変わりません。つまり、これまで、受験に対して、学校がある程度やってくれていたことを、学校は、何もしなくなっただけです。
結果として、今まで以上に、学院や、入試コーディネーター頼りになりました。そうでなくても、韓国では、受験のシステムがころころ変わります。専門家の助言が必要です。
結局、学校改革は、お金のあるものとないものの格差が広がっただけ、という批判も多いです。
学業と余暇のバランスが必要です。
子供たちの基本的な権利を守るべきだ、子供は勉強する機械ではない、最近は、そう言われるようになりました。
また、中高生たちも、学業と余暇のバランスが必要だと、訴えるようになっています。
しかし、のんびりしていたら、実際は落ちこぼれるだけです。
大人になって自分が困るだけです。嫌でも何でも頑張るしかないのです。しかし、このような激しい受験競争に、とてもついていけない、そんな子も出てきます。
韓国で落ちこぼれたら、韓国で生活するのは大変です。
ですので、そんな時は、親が子供のことを思って、海外に出るケースが多いです。ビザが比較的出やすく、暮らしやすいと言われる
オーストラリアやニュージーランド、カナダへ行きます。
あるいは、勉強はだめだから、せめて英語だけでも、そう考えて、英語圏に留学するケースも多いです。
その国の生活に慣れると、子供たちは「韓国には戻りたくない」と言いだすそうです。
中学生以上だとほぼ100%、韓国には戻らないと言うそうです。カナダにある、韓国系の留学センターの人が言っていました。カナダの生活に慣れたら、韓国の生活には、もう適応できなくなります。そのまま、カナダで大学まで行けるよう、親はサポートするしかなくなります。
大学まで行こうと思ったら、金銭的にも移民してしまったほうが得です。
外国人は授業料、めちゃくちゃ高いです。
私は、今、カナダにいますが、移民ビザを目標にした韓国人、すご~くたくさんいます。事情は様々ですが、親たちは、皆、子供たちのために頑張っています。