韓国の幼児の養育について、韓国人の視点で紹介します。

目次
- ○ 子供の1歳の誕生日には盛大にパーティーを開きます。
- ・トルチャンチと言います。
- ・このようなパーティーは、専用の会場があります。
- ・子供の1歳の誕生日パーティーは、結婚式ほど重要ではありません。
- ・とにかく写真をたくさん撮って、アルバムを作ります。
- ・写真は当然修整します。子供はそんなに修整しませんが、父親、母親はたくさん修整します。
- ・アルバム用の写真は、専用のスタジオで撮ったり、野外で撮ったりもします。
- ・パーティー自体は、けっこう長い時間することが多いです。短くて3時間、長いときには、午前11時から午後6時までとかします。
- ○ パーティーでは、子供の将来を占うトルチャビをします。
- ・これは、昔のバージョンですが、この中から、子供にどれかひとつをつかませます。
- ・最近は、選ばせる物がだいぶ変わりました。トルチャビには、時代の流れや流行があります。
- ○ 招待された親戚たちは、お祝いに現金や、金の指輪、金のブレスレット、あるいは、金のスプーンをプレゼントします。
- ・金の指輪を贈るのは、何かあったら、そのまま売れるからです。
- ・最近は、金の指輪ではなく、金のスプーンをプレゼントすることが増えているそうです。
- ・韓国では、貧しい象徴として土のスプーン、富の象徴として金のスプーンをよく使います。
- ・高級イメージの物も、売れていて、指輪を贈る人より、スプーンを贈る人のほうが多くなっているそうです。
- ○ 子供の気を殺してはいけません。
- ・「気を殺す」というのは、積極性を失わせ、いじけたようにするそんなようなニュアンスです。
- ○ マンションでも子供たちは駆け回ったり飛び跳ねたりします。
- ・マンションの上の階から下の階に響く音のトラブルが、10年くらい前から、大きな社会問題となっています。
- ・層間騒音の原因は、70%以上が、子供が飛び跳ねることだそうです。
- ○ 子供の入店を拒否する「ノーキッズゾーン(No Kids Zone)」が増えています。
- ・一般のコーヒーショップなどは、ベビーカーや小さい子供お断りの店が増えています。
- ・最近の親は、店で子供が騒いでも注意することはありません。
- ・リスク回避の意味で子供を断る食堂が続出しています。
- ・韓国では「KIDS CAFE」など、子供連れ専用のところと、「NO KIDS」という子供連れ禁止のところと、どちらかにはっきり分かれてきています。
- ○ 子供の背が高くなるよう親が必死です。
- ・最近では「背が経済力だ」「背がスペックだ」と言われるほどです。
- ・もし、子供の背が低いと、自分の育て方に問題があるのではないかと焦ります。
- ・そんな親たちのために、「背 成長クリニック」がどんどん増えています。
- ・クリニックに行くと、子供の成長が止まる前に、早めにホルモン剤を注射したほうがいいと勧められます。
- ・背を高くする健康食品もあります。
- ・成長を促進する運動器具もありますが、一番は、よく食べてよく運動して早く寝ることだと専門の医者たちは言います。
- ○ 子供を預けられる所はたくさんあります
- ・幼稚園は、満4歳から6歳くらいの子供が行く所で、日本の幼稚園とだいたい同じです。
- ・子供の家は、満ゼロ歳から預かってくれます。大きい子供の家が日本の保育園、小さい子供の家が日本の託児所のような感じかと思います。
- ・窓に子供用の飾りがあるのですぐわかります。
- ・マンションでは、自分の家の一室を子供の家として運用しています。
- ・子供の家を開くのは、それほど難しくありません。
- ・しかし、そのためか、幼児虐待などがテレビのニュースによく出てきます。
- ○ 子育てを両親に任せて会社で働く人が増えています。
- ・子供にとっては、祖父母がお父さんとお母さんの代わりですが、お父さん、お母さんよりも、おじいちゃん、おばあちゃんになついてしまう場合も多いそうです。
子供の1歳の誕生日には盛大にパーティーを開きます。
家族や親戚、友人などを招いて、大々的にパーティーを開きますが、これを
トルチャンチと言います。
「トル(돌)」は、「歳」のような意味で、ここでは初めての歳で1歳の意味、「チャンチ(잔치)」は宴会、パーティーです。
このようなパーティーは、専用の会場があります。
飾りつけや招待客用のパイキング料理、カメラマンなどが全てセットになっています。盛大にやる人もいますし、簡単にやる人もいますが、韓国人なら必ずやります。だいたい100人とかを招待します。50人分の料理と、写真撮影、アルバムなどのセットが400万ウォンくらいで、あとは、料理一人分が3万ウォンくらいの追加料金です。招待された人は祝儀を払います。5万ウォンくらい出すのが普通です。
為替レートは、平均すると、だいたい100円=1000ウォンです。
子供の1歳の誕生日パーティーは、結婚式ほど重要ではありません。
しかし、都合がつく限りみんな行きます。祝儀を払うのは後で自分がもらうためでもありますが、韓国の習慣で礼儀です。ですから、盛大にやっても、その分招待客が来れば、プラスマイナスで、プラスになります。
とにかく写真をたくさん撮って、アルバムを作ります。
金のスプーンを必ず持たせます。
写真は当然修整します。子供はそんなに修整しませんが、父親、母親はたくさん修整します。
この写真の夫婦は、私の弟夫婦なのですが、弟は、とても若くて肌のきれいな好青年になっています。
アルバム用の写真は、専用のスタジオで撮ったり、野外で撮ったりもします。
全部パッケージでセットになっています。
パーティー自体は、けっこう長い時間することが多いです。短くて3時間、長いときには、午前11時から午後6時までとかします。
招待客は、都合のつく時間に行って、あいさつして食事をして帰ります。
パーティーでは、子供の将来を占うトルチャビをします。
トルチャビ(돌잡이)は、箱にいろいろな物(判事が使う木槌とか、糸とか、ボールとか)を入れて、そのどれを子供が取るかで、その子の未来を占うものです。「トル(돌)」は「満1歳」、「チャビ(잡이)」は「つかむ」の名詞形で「つかみ」です。
これは、昔のバージョンですが、この中から、子供にどれかひとつをつかませます。
そして、その選んだ物によって子供の将来がわかるというものです。ノートを選んだら「学者」、お金を選んだら「お金持ち」、糸を選んだら「長生き」、筆やすずりを選んだら、今で言うと「公務員」、弓を選んだら、今で言うと「軍人」です。
最近は、選ばせる物がだいぶ変わりました。トルチャビには、時代の流れや流行があります。
最近では、聴診器を選んだら「医者」、木槌を選んだら「裁判官」、マイクを選んだら「歌手」、ゴルフボールを選んだら「ゴルフ(スポーツ)選手」というようになっています。
ちなみに、主役の甥っ子は聴診器を選びました。将来有望です。
招待された親戚たちは、お祝いに現金や、金の指輪、金のブレスレット、あるいは、金のスプーンをプレゼントします。
韓国では、金などは、3.75gが1匁(돈)となります。昔の日本の単位をそのまま使っています。ちなみに土地も3.3㎡で1坪です。金の指輪も普通は1匁のものを贈ります。遠い親戚とかなら半匁で買います。
金の指輪を贈るのは、何かあったら、そのまま売れるからです。
金の値段が上がれば、指輪の価値も上がりますし、値段が下がれば、価値も下がります。もらった指輪は、普通は、そのまま持っていますが、中には、さっさと売り払って現金にしてしまう母親もいるようです。
家族が多いと、両手の指全部に「金の指輪」ということもあります。韓国では、家族間で、お互いに物を贈り合うことが多いです。
最近は、金の指輪ではなく、金のスプーンをプレゼントすることが増えているそうです。
ミニで、純金3.75グラム、つまり1匁で、値段は23万です。
韓国では、貧しい象徴として土のスプーン、富の象徴として金のスプーンをよく使います。
土のスプーンを持って生まれたか、金のスプーンを持って生まれたか、韓国では、それで、ほとんど一生が決まります。金のスプーンを持って生まれなかったけど、運命が変わることを祈って、プレゼントとして贈るようです。
高級イメージの物も、売れていて、指輪を贈る人より、スプーンを贈る人のほうが多くなっているそうです。
子供の気を殺してはいけません。
日本では、公共の場で騒いでいる子供がいたら、まず親が注意をしますし、見知らぬ人が注意をすることがありますよね。でも、韓国では、親も注意しませんし周りの人が注意することもありません。もし、家族以外の人が自分の子供を注意したら、子供の「気を殺す」と言って、親が怒り出します。
「気を殺す」というのは、積極性を失わせ、いじけたようにするそんなようなニュアンスです。
他人が自分の子供の教育に口出しするな、ということですが、
親たちが、こんな考え方なので、お店が「NO KIDS」 と子供連れを断るのも、よくわかります。
マンションでも子供たちは駆け回ったり飛び跳ねたりします。
マンションの上の階から下の階に響く音のトラブルが、10年くらい前から、大きな社会問題となっています。
上の階から下の階に響く音を韓国では「層間騒音(층간소음)」と言います。
騒音がひどい場合、直接文句を言う人も少なくないのですが、そこでけんかになることも少なくありません。そして、それが積もり積もって、殺人事件に発展することもあります。
層間騒音の原因は、70%以上が、子供が飛び跳ねることだそうです。
マンションの音トラブルの相談件数は、年間4万件を超えていますが、その72%は、子供の飛び跳ねです。
下の階のことは考えずに子供はぴょんぴょん飛び跳ねます。今の親たちは、子供が部屋で飛び跳ねても騒いでも、やめさせることはしません。子供のやりたい放題にさせています。
子供の入店を拒否する「ノーキッズゾーン(No Kids Zone)」が増えています。
あちこちに「キッズカフェ」がありますが、
一般のコーヒーショップなどは、ベビーカーや小さい子供お断りの店が増えています。
「ノーキッズゾーン(노키즈존、No Kids Zone)」とか「ノーキッズカフェ(노키즈카페、No Kids Cafe)」とか、あるいは「ノーキッズ食堂(노키즈식당、No Kids 食堂)」と言います。この言葉は、2014年ころから急速に使われ始めた言葉で、それまではなかった言葉です。
最近の親は、店で子供が騒いでも注意することはありません。
騒いでいる子供に対して、店員が親に注意すると、親は逆ギレします。店員に対し、不当な謝罪を求めることもあり、店としては、リスク回避のために子供連れを断るしかありません。
また、今までに、いくつかの裁判があったのですが、子供が、お湯を入れたコップを持った従業員にぶつかり、やけどをしたり、子供が不注意で、店内の物にぶつかりけがをした時、裁判では、店側の責任70%、親の責任30%くらいの判決が出ます。
こんなことで、高い賠償金を払わされたのでは店側は営業できないので、
リスク回避の意味で子供を断る食堂が続出しています。
すみません。小学生までの子供の入場を制限します。
そして、焼肉屋などで多いのですが、店の前に、具体的に「NO KIDS」などと書いていなくても、子供用のイスなどをなくすことで、「ここは子供お断りだな」とわかるようにしている所も多いようです。
また、スターバックスなど、「若い人たちの場所」というイメージが強いところへ、ベビーカーや、小さい子供を連れて行く韓国人は元々いません。カフェや食堂だけでなく、映画館でもノーキッズゾーン(No Kids Zone)のところが増えています。
韓国では「KIDS CAFE」など、子供連れ専用のところと、「NO KIDS」という子供連れ禁止のところと、どちらかにはっきり分かれてきています。
子連れの人たちは、「これでは行き場がない」「差別だ」と言っていますが、結局は、子連れの親の考え方、態度が変わらない限り、今後も、この傾向は変わらないと思います。
子供の背が高くなるよう親が必死です。
韓国では、背が高いことは、とても大事です。そのため、
最近では「背が経済力だ」「背がスペックだ」と言われるほどです。
親は、子供の背が高くなるよう頑張ります。
もし、子供の背が低いと、自分の育て方に問題があるのではないかと焦ります。
背伸ばし熱風 食べすぎても伸びません
そんな親たちのために、「背 成長クリニック」がどんどん増えています。
背成長クリニックは、病院もありますし、韓医院(漢方の病院)もあります。
クリニックに行くと、子供の成長が止まる前に、早めにホルモン剤を注射したほうがいいと勧められます。
もちろん子供は注射を嫌がりますが、親は、子供のためを思って注射します。多くは、病院で注射針も処方されるので、自宅で、自分で、子供に注射します。親として、できるだけのことを子供にしなかったら、親として失格だという焦りが親にあります。今、成長ホルモン注射剤は、年間1000億ウォン規模の大きな市場となっています。ホルモン注射は、保険が利かないので、1年で1000万ウォンくらいかかるそうです。
背を高くする健康食品もあります。
今、韓国では一番売れている「子供の背を伸ばす」サプリメントです。子供の背が伸びると聞けば、例え高額でも親は払います。「子供の背を伸ばす」市場は、どんどん規模が大きくなっています。
成長を促進する運動器具もありますが、一番は、よく食べてよく運動して早く寝ることだと専門の医者たちは言います。
特に、成長ホルモンの分泌が活発になる、夜9時前に寝ることが一番大事だそうです。
しかし、背が低い子を持つ親は、何もしないわけにはいかず、わらをもつかむ思いで、クリニックに通っています。クリニックに通い、ホルモン注射をして、実際に子供の背が伸びることが多いのですが、しかし、それがホルモン剤のおかげなのか、元々背が伸びる時期だったのか、それは誰にもわからないことなんです。
日本の小児科では、親が焦らないように、よほど小さかったりしないと、心配しないよう言ってくれますが、韓国では、大きくないとダメなんです。
子供を預けられる所はたくさんあります
小学校入学前の小さい子供を預かるところに幼稚園(유치원)と子供の家(어린이집)があります。
幼稚園は、満4歳から6歳くらいの子供が行く所で、日本の幼稚園とだいたい同じです。
子供の家は、満ゼロ歳から預かってくれます。大きい子供の家が日本の保育園、小さい子供の家が日本の託児所のような感じかと思います。
日本では、保育園が足りないということを、よくニュースなどでやってますが、韓国では足りないことはありません。例えば、高層マンション団地(아파트단지)に行けば、あちこちに子供の家を見ることができます。
窓に子供用の飾りがあるのですぐわかります。
マンションでは、自分の家の一室を子供の家として運用しています。
韓国には、単独の建物の大きな子供の家もありますが、部屋一つで運営している小さな子供の家がたくさんあります。マンションの一室で運営すれば、家賃などの経費が出ません。
また、子供の家には国から補助金が出ますから、子供好きならば、土日は休みだし、いい商売です。
子供の家を開くのは、それほど難しくありません。
保育教師2級の資格と保育教育の経験が2年あれば、誰でも20名以下の子供の家を開くことができます。保育教師2級は、大学で幼児教育を専攻するか資格試験を受ければ取れます。資格試験は、1年くらい勉強すれば誰でも簡単に取れます。そのくらい簡単に子供の家の経営者になれます。だから、数がたくさんあります。
しかし、そのためか、幼児虐待などがテレビのニュースによく出てきます。
以前、子供の家に預けた初日の、わずか2時間後に、脳死になった赤ちゃんのニュースがありました。保育士が赤ちゃんの扱いに未熟だったようです。事故のニュースもよく出るので、子供の家に子供を預けることに、親は皆、少なからず不安があります。
でも、共働きの夫婦は、それでも子供の家に預けるしかないので、仕方なく預けています。今は、監視カメラ(CCTV)の設置が義務になっているので、ちょっとでも子供の様子がおかしい時は、カメラの映像を確認します。でも、カメラには死角があるんですよね。
一時よりは減りましたが、保育士が子供を虐待していた事件のニュースが、今でもあります。
子育てを両親に任せて会社で働く人が増えています。
韓国では、子供が生まれても共働きをする夫婦が増えています。以前は、妊娠、出産をする時に、女性は会社をやめるのが一般的でしたが、最近は法律で育児休暇の権利を認めているため、大企業では育児休暇のあと、会社に復帰しやすくなりました。しかし、会社に戻ると言っても、子供は、まだ小さいです。保育園に預けても、夜遅い時間までは難しいです。
子供にとっては、祖父母がお父さんとお母さんの代わりですが、お父さん、お母さんよりも、おじいちゃん、おばあちゃんになついてしまう場合も多いそうです。
そんな、お母さん代わりのおばあちゃんを「ハルマ(할마)」、お父さん代わりのおじいちゃんを「ハルバ(할빠)」と言います。