韓国の正月(除夜の鐘、祭祀)の風習
韓国の正月の風習をご紹介します。韓国では、お正月は旧暦で祝います。ソルラルと言います。
目次
- ○ 1 1年の終わりは、除夜の鐘を33回鳴らします。
- ・普信閣(보신각・ボシンガク)の鐘を鳴らします。
- ・鐘を鳴らすのは、以前は政治家たちでしたが、
- ・2022年は、国益に貢献した、各分野のソウル市民が選ばれました。
- ・韓国では除夜の鐘は33回です。
- ・この日は鍾路にたくさんの人が集まります。
- ・2019年以降、コロナ禍でオンラインでの開催でしたが、
- ○ 2 新暦の正月は、正月気分がありません。
- ・お正月のあいさつは「새해 복 많이 받으세요.(セヘ ポッ マニ パドゥセヨ)」
- ○ 3 旧歴の1月1日が「ソル(설)」、旧暦のお正月、旧正月です。
- ○ 4 祭祀(제사・チェサ)という、日本の法事のようなことをします。
- ・祭祀では、ご先祖様に食べ物を捧げます。
- ・ご先祖様にあいさつをします。
- ・普通はその家を継ぐ成年の長男の家で行われます。
- ・来なくていいよと言われても、行かなければなりません。
- ○ 5 旧正月と秋夕(チュソク)の時期は帰省します。
- ・旧正月と秋夕(チュソク)の帰省は大渋滞します。
- ・ソウルから釜山までの400キロに8時間40分かかる予想です。
- ・今年の注目は、旧正月連休中の高速道路料金が無料になることです。
- ○ 6 旧正月には「떡국(トックク)」を食べます。
- ・「トックク」は、とてもシンプルな料理です。
- ○ 7 子供達には「お年玉(세뱃돈・歳拝トン)」があります。
- ・子供たちにはちゃんとあいさつをしたらあげます。
- ・お年玉だけでなく子供たちに服を買ってあげます。
- ・働いている人は、両親にもお年玉をあげます。
- ・たまにしか実家に帰れない人は、正月にたくさんお金を渡します。
- ・お年玉は新札であげます。
- ○ 8 旧正月には贈り物を贈ります。
- ・この時期には会社からも贈り物が出ます。
- ・健康食品も人気です。
- ・韓牛のカルビセットです。
- ・イシモチの干物(굴비・クルビ)です。
- ・以前は、この時期に、子供の担任の先生に贈り物を贈りました。
- ・2016年に不正な贈り物を禁止する法律ができました。
- ○ 9 お正月料理も出来合いの物を買ってきて済ませます。
- ・以前は、正月準備の買い物は「市場(시장・シジャン)」でした。
- ・リュックをしょってパーカーを着たおばさんたちが集まりました。
- ○ 10 正月に帰省しない人たちが増えています。
- ・韓国で長い連休は、旧正月と秋夕の時だけです。
- ・少し前までは、旧正月には街中の店はほとんど休みでした。
- ・旧正月や秋夕のお土産は手渡しが原則です。
- ○ 11 沐浴斎戒という風習があります。
- ・以前は、家族が集まったら一緒に銭湯に出かけました。
- ・しかし、家族のつながりがどんどん薄れていきました。
- ・沐浴斎戒の風習は、過去のものになってしまいました。
1 1年の終わりは、除夜の鐘を33回鳴らします。
韓国では、正月は、旧正月で大々的に祝います。新正月の休みは1月1日だけで、あまり正月気分はありませんが、カウントダウンと「除夜の鐘」があります。「除夜の鐘」と言っても、お寺の鐘を鳴らすのではなく、
普信閣(보신각・ボシンガク)の鐘を鳴らします。
ソウルの鍾路(종로・チョンノ)にあります。これは市の公式行事で「除夜の鐘 打鐘行事(제야의종 타종행사)」と言います。
鐘を鳴らすのは、以前は政治家たちでしたが、
最近は、雰囲気が変わりました。
除夜の鐘を打つのは、ソウル市長など、決まった人物4人と、市民代表の10人です。市民代表にはオリンピックで金メダルをとった有名人などがよく選ばれていますが。最近は時の人が選ばれることが増えています。2019年は、市民のネット投票で選ばれましたが、今年は、ネット投票はありませんでした。
2022年は、国益に貢献した、各分野のソウル市民が選ばれました。
カタールワールドカップで活躍したチョギュソン(조슈성)選手も選ばれました。
韓国では除夜の鐘は33回です。
33は仏教から来た数で、朝鮮時代には朝を知らせる時の鐘の数でした。ただ、除夜の鐘の習慣自体は日本の習慣から来たようです。
この日は鍾路にたくさんの人が集まります。
だいたい10万人が集まるそうです。周辺道路は通行止めとなり、地下鉄やバスは終電が2時ごろまで延長されます。日本の初詣の賑わいに近いかもしれません。
カウントダウン後の0時ちょうどに、希望の風船を飛ばします。風船は配っているそうなので、手ぶらで行っても風船を飛ばすことができるそうです。
2019年以降、コロナ禍でオンラインでの開催でしたが、
2022年は3年ぶりに対面で行われ、例年並みの10万人以上が集まりました。
そして、除夜の鐘と言えば、元々は、ソウル鍾路の普信閣ひとつだけでしたが、今では全国各地で「除夜の鐘打鐘行事」があります。
2 新暦の正月は、正月気分がありません。
韓国では旧暦の正月が本当のお正月です。故郷に帰省して家族と過ごすのも旧正月です。そのため、新暦の正月は、祝日も1月1日だけです。大企業は2日くらい休むところが多いですが、公務員は12月31日まで働いて、1月2日からまた仕事です。
お正月のあいさつは「새해 복 많이 받으세요.(セヘ ポッ マニ パドゥセヨ)」
韓国では、年末でも年が明けてからでも同じです。直訳すると「新年 福をたくさんもらってください」となります。日本式に意訳すると「新年には、良いことがたくさんありますように」そんな意味です。
3 旧歴の1月1日が「ソル(설)」、旧暦のお正月、旧正月です。
「旧正月」のほうが「新正月」より重要度はずっと高いのですが、「新正月」も正月なので、韓国では正月が2回あることになります。ですから、正月のあいさつをする時期が1年に2回あります。日本人は、旧正月をほとんど意識していないみたいですが、韓国では、名節(명절)の中でも一番大事な日のひとつです。
旧正月のお正月を、ソル(설)、ソルラル(설날)、あるいは、クジョン(구정・旧正)と言います。
お正月と、旧暦の8月15日の秋夕(추석・チュソク)には、大切な行事があります。
4 祭祀(제사・チェサ)という、日本の法事のようなことをします。
葬式も先祖の供養も、日本は仏教式で、韓国は儒教式です。ですので、やり方がちょっと違います。
祭祀では、ご先祖様に食べ物を捧げます。
この中に白いキムチ(漬物)はありますが「赤いキムチ」はありません。唐辛子が韓国に入ったのは16世紀です。ポルトガル人が日本に伝えたものが伝わったものです。祭祀の歴史はそれよりも古いので、唐辛子は入っていません。
ご先祖様にあいさつをします。
祭祀は、直系の先祖たちに感謝の気持ちを伝え、我々子孫を守ってくださいとお願いするためのものです。
普通はその家を継ぐ成年の長男の家で行われます。
最近は、簡素化したり、毎年やらないケースも増えていますが、旧正月と秋夕には、その家を継ぐ長男の家で祭祀をします。そのために家族が集ままりますが、その準備は長男の嫁の仕事です。とても大変です。祭祀のための料理はもちろん、親戚がたくさん来るので、その分の料理などを買いに行ったり、料理を作ったり出したり後片付けしたりを何度もしなければなりません。
最近は、女性たちが皆で手分けしてやることも多いみたいですが、それでも基本は長男の嫁の仕事です。自分の息子(長男)が結婚したら、その嫁にやらせます。ですから、長男は結婚相手としては人気がありません。
旧正月や秋夕の時だけでなく普段から舅や姑に気を使わなければならないし、将来はいっしょに住まなければならないからです。うるさい姑だと本当に大変です。日本も事情は似ているみたいですが、多分韓国のほうが大変です。
来なくていいよと言われても、行かなければなりません。
旧正月が近くなったら、長男の嫁は「お母さん、旧正月は私が早く行って全部やりますから」と電話を入れます。すると姑は「大丈夫だよ。私が全部やるから、ゆっくり来なさい」と答えます。それが普通です。でも、嫁は早く行かなければなりません。もしそうしないと、韓国では常識のない人間になり、後で何を言われるかわかりません。旦那も「別に何もしなくていいよ」と普通言います。でも、絶対に絶対に全部しなければならないんです。
旦那の実家へ行ったら、姑は嫁に「休んでていいよ」と言ってくれます。でも、嫁は「お母さん、大丈夫です。私がしますから」と言って、絶対に姑を休ませなければなりません。すると「いいわよ。私が慣れてるから」と姑が言うはずです。それを嫁は無理やり姑を休ませなければなりません。それが韓国の常識です。外国人にはわかりにくい、韓国人の会話ですね。
祭祀に関するいろいろなことは、長男の嫁が全部やることになっています。それは皆知っているので、言葉だけでも思いやるというか、そんな気持ちのやりとりをします。
5 旧正月と秋夕(チュソク)の時期は帰省します。
秋夕(チュソク)は、旧暦の8月15日です。日本でいうお盆です。日本は仏教式のお盆、韓国は儒教式の秋夕(チュソク)です。秋夕(チュソク)にも祭祀を行います。ですので、今はソウルに住んでいても、元々が田舎の出身の場合、この時期と秋夕(チュソク)の時期は帰省します。日本人が、年末年始とお盆の時期に帰省するのと同じです。
旧正月と秋夕(チュソク)の帰省は大渋滞します。
韓国の渋滞は「駐車場」と言われるほどです。
ソウルから釜山までの400キロに8時間40分かかる予想です。
黒字が「帰省」赤字が「帰京(ソウルに帰る)」にかかる時間です。
以前はソウルから釜山まで12時間かかることもあったので、だいぶ短くなりました。それでも大変なんですけど。
でも、どんなに時間がかかっても、この日は帰らなければなりません。「大変だったけど頑張って帰った」ということが大事なので、むしろ時間がかかってもいいんです。
今年の注目は、旧正月連休中の高速道路料金が無料になることです。
政府からのお年玉です。名目は、低所得者層を助けるためで、電気代やガス代を補助するのと同じです。
6 旧正月には「떡국(トックク)」を食べます。
韓国では、旧正月には「トックク(떡국)」を食べます。「トッ(떡)」は「おもち」、「クク(국)」はスープですから、「トックク(떡국)」は「おもちスープ」ですね。
韓国にいる時は、毎年母の作る「トックク」を食べました。でも、ここは日本ですから、私は「トックク」を食べることは特別意識していないのですが、旧正月に韓国人と会うと「トックク食べましたか?(떡국 먹었어요?)」と聞かれることがよくあります。それだけ「トックク」を食べることは旧正月には欠かせない行事なんです。
「トックク」は、とてもシンプルな料理です。
ここに肉をのせて食べるのが、昔は最高のぜいたくでした。そのため、正月には「肉入り」の「トックク」を食べることも多いです。
「おもち」は、今は特別なものではありませんが、昔々、朝鮮時代〔李氏朝鮮時代〕までは、一般の人はお米を食べるのもやっとで、おもちはとても高級なものでした。ですから、正月の特別なときにだけ、おもちや肉を食べることができました。日本と似ていますね。
でも、そのうち「おもち」が普通に食べられるようになると、いつでも食べられる料理になりました。今では、韓国では一年中おもちを食べます。
「トックク」はとてもシンプルな味ですが、それは昔から変わらない伝統の味だからです。韓国に唐辛子が入る前から、あまり変わっていないかもしれません。そう考えながら食べると、シンプルだけど何か不思議なおいしさが感じられると思います。
7 子供達には「お年玉(세뱃돈・歳拝トン)」があります。
これは日本と同じですね。「세배(歳拝)」は「新年のあいさつ」です。「トン(돈)」は「お金」ですから、「세뱃돈」は「新年のあいさつのお金」という意味です。
子供たちにはちゃんとあいさつをしたらあげます。
両手を上にあげて、それからそのまましゃがんであいさつします。男の子と女の子で、上にする手が違います。韓国のお年玉の相場は、小学生なら1~3万ウォン、中学生なら3万~7万ウォンくらいです。お金持ちの家庭ならもっと多し、そうでない家庭だともう少し少ないかもしれません。韓国では、祝儀などは、1、3、5、7、10と、奇数にするのが普通です。10は1が奇数だから奇数と考えます。日本と同じですね。
お年玉をもらうのは、普通は高校生までです。
お年玉だけでなく子供たちに服を買ってあげます。
昔は新しい韓服(伝統服)を買うのが普通でした。子供は毎年大きくなりますから、年に一度、新しいのを買いました。でも、最近は韓服を着る機会は少ないので、別のちょっといい服を買うことが多いようです。これを「ソルビム(설빔)」と言います。「ソル(설)」は「正月」、「ビム(빔)」は辞書では「晴れ着」と出ています。ですから、「正月の晴れ着」という意味ですね。上の写真で子供たちが着ているのが「ソルビム(설빔)」です。
働いている人は、両親にもお年玉をあげます。
韓国では、子供たちにいろいろあげるだけでなく、自分が働くようになったら自分の両親にもお年玉を渡します。これは少なくとも10万ウォン以上です。「これで何かおいしい物食べて」という感じです。
お年玉だけでなく、毎月毎月とか、ボーナスもらったときとか、あるいは、親のほうで出費が多くて大変そうな時は、成人した子供たちは親にお金をあげるのが普通です。
たまにしか実家に帰れない人は、正月にたくさんお金を渡します。
もちろん親のほうも、子供に何かあってお金が足りないと思ったら、どんどん援助します。親が援助してくれると言っても、普通は「大丈夫、大丈夫」と言って断りますが、親のほうはお金を借りてでも何とかしようとします。
親から子供への援助と、子供から親への援助がそれぞれあって、それを計算してみたらプラスマイナスでゼロになるとしても、韓国では、このやりとりが大事です。お金に気持ちが入っているので、これは気持ちのやりとりでもあります。
そして、韓国人にとっては、家族のことは自分のことと同じように、あるいはそれ以上に大事だからです。
お年玉は新札であげます。
以前は、それほど気にしなかったのですが、最近は、お年玉は新札で渡すのが礼儀のようになりました。そのため、旧正月前の銀行は、新札交換に訪れる人たちで大混雑します。窓口を別に用意したりするほどです。
8 旧正月には贈り物を贈ります。
旧正月には、贈り物を贈る習慣があります。日本のお正月とお歳暮がいっしょになったような感じですが、日本よりも派手に贈ります。日本のお歳暮セットと似ていますが、ビールはありません。
この時期には会社からも贈り物が出ます。
普通の会社はこのレベルです。SPAMもけっこう多いです。
健康食品も人気です。
景気のいい会社は、ボーナスが出ます。ですから、この時期になると、帰省して家族に会えるし、会社からもプレゼントがもらえるし、みんな気持ちがそわそわうきうきします。
帰省先にも、贈り物を持って行きます。結婚している人は、どちらの実家にも贈り物を持って行きます。その時は、カルビとかイシモチなど食べ物が多いです。
韓牛のカルビセットです。
旧正月や秋夕の贈り物の定番です。
イシモチの干物(굴비・クルビ)です。
高級な物は、このくらいのセットで100万ウォンくらいします。これも定番です。
以前は、この時期に、子供の担任の先生に贈り物を贈りました。
最近は、ほとんどなくなりましたが、お金持ちは100万ウォンとか200万ウォンとかするブランド品を贈ることもけっこうあったらしいです。
私の友達に小学校の先生がいますが、贈り物はそのままもらうそうです。贈り物をもらうと、やっぱりその生徒が気になるそうです。韓国では、先生のひいきで内申点とかも変わりますから、先生に気に入ってもらえるかどうかに子供の未来がかかっています。
大学で教授を目指している人も、教授に贈り物を贈ります。贈り物だけでなくお金も渡します。
また、一般の大企業では減ったようですが、特に軍隊とか公務員とか、古い体質のところは上司のひいきで昇進が決まりますから、上司に贈り物を贈ります。
私の親戚に、軍隊の将軍だった人がいるのですが、この時期は食べ物を買わなくてもよかったそうです。山ほどカルビが届くと言っていました。
また、政治家もこの時期にお世話になっている人に贈り物を贈るようです。以前はりんご箱とかみかん箱とかを贈ったのですが、実はその中には現金が入っているというそんな話がたくさんありました。恐らく今ではもっと巧妙にやっていると思います。受け取るほうも、たとえ怪しいと思っても、旧正月の贈り物を断ることは人情的にできませんから、みんなこの時期に「いろいろな贈り物」を贈ります。
2016年に不正な贈り物を禁止する法律ができました。
主な対象は、公務員や政治家ですが、学校の教員も公務員なので含まれます。
法案の内容は、簡単に言うと、食事の接待は3万ウォン以内、贈り物は5万ウォン以内、それを超えると処罰の対象になります。この法律の施行で、贈り物の国、韓国が大きく変わりました。
しかし、学校では、表向きは減っても、裏では今でもたくさんあるそうです。
9 お正月料理も出来合いの物を買ってきて済ませます。
お正月の料理は、品数も多く、また親戚が集まるので、量もたくさん作らなければなりません。それは、とても大変なことです。しかし、最近は、共稼ぎの夫婦も多く、材料を買って来たり料理を作ったりする時間も余力もありません。そこで、そんな共働きの奥さん向けに、マートでも市場でも、たくさんの出来合いの物(お惣菜)が売られています。そのお惣菜の販売量が、2015年ころから急増していて、既にひとつのマーケットになっているそうです。マートでも市場でも、正月用料理のお惣菜の種類をどんどん増やしています。
以前は、正月準備の買い物は「市場(시장・シジャン)」でした。
特設の売場も設けられたりしました。
リュックをしょってパーカーを着たおばさんたちが集まりました。
正月前には、そんなおばさんたちが市場にたくさんいて、それも、ひとつの名物だったのですけど、時代が変わりました。
日本で、正月用のおせち料理を、家で作る家庭が少なくなったように、韓国も、正月料理を買って済ませるのが、これからは普通になるかもしれません。それはそれで、韓国の女性たちは、かなり楽になるんですけど。
10 正月に帰省しない人たちが増えています。
韓国では、旧暦の1月1日と、その前後合わせて3日が公休日(祝日)となるので、カレンダーの並びによっては、土日と合わせて、最大5連休となります。また、火曜日から木曜日が休みになる年には、会社によっては、あるいは、人によっては、月曜日と金曜日を休んで、9連休になるところもあります。韓国で9連休なんて、時代が変わったなあと思います。ちょっと前まで考えられないことです。以前は、会社を1週間も休めるのは結婚する時くらいでした。
韓国で長い連休は、旧正月と秋夕の時だけです。
そのため、その時期に海外旅行に出る人も増え、コロナ禍の前まで、インチョン空港は、毎年毎年、過去最高の混雑を更新していました。
少し前までは、旧正月には街中の店はほとんど休みでした。
そのため、ソウル市内だと外出するのが少し不便でしたが、今では、開いている店も多く、あまりそういう感じはありません。旧正月に、必ず集まる家族や親戚が減っていて、韓国の家族関係も、少しずつ変わってきています。
旧正月や秋夕のお土産は手渡しが原則です。
しかし、最近は宅配で送る人も増えているそうです。送るといっても、家族や親戚などに送るので、日本のお中元やお歳暮とは少し違います。
ただ、韓国の宅配業者は、いい加減な業者もあって、破損事故や、旧正月が過ぎてから届けられたりとか、けっこうあって問題になっています。
贈り物は、直接会って、顔を見ながら、あいさつしながら渡すほうが、なんか温かみがあっていいと思います。宅配で送って終わりでは、なんか冷たい感じがしますが、韓国もどんどん変わってきているんですね。
11 沐浴斎戒という風習があります。
沐浴斎戒(목욕재계)というのは、お正月を迎えるにあたって、心身ともに清めるために銭湯(대중목욕탕・大衆沐浴場)へ行って、体と心をきれいにすることです。インド人が、ガンジス川で沐浴して心や体を清めるのも、韓国語では沐浴斎戒です。
以前は、家族が集まったら一緒に銭湯に出かけました。
正月前に、新年を迎えるため沐浴斎戒にも行きますし、久しぶりに家族に会い、祖父母と孫たちが、いっしょに銭湯(大衆沐浴場)に行きました。そして、お互いに背中のアカスリをしたりして、スキンシップを楽しみました。
90年代のはじめくらいまで、銭湯(大衆沐浴場)は、正月の連休が書き入れ時でした。
しかし、家族のつながりがどんどん薄れていきました。
そこへ、ここ数年のコロナ禍の影響で、銭湯(大衆沐浴場)へ行くこと自体がほとんどなくなりました。