韓国の軍隊事情、兵役について【2023年最新版】
韓国では、BTSやK-POPのアイドルたちも、男性であれば、皆、軍隊に入ります。ここでは、そんな、韓国の軍隊についてまとめてみました。
目次
- ○ 1 韓国では、健康な男子は、兵役は義務[国民役]です。
- ・軍隊の入隊時期は、満20歳から28歳までです。
- ・満19歳になると徴兵検査を受けます。
- ・徴兵検査、身体検査の結果、現在10%ちょっとが兵役免除となっています。
- ・大財閥の子息は、兵役免除率が35%くらいだそうです。
- ・芸術や体育の分野で、国威宣揚、あるいは芸術暢達に寄与した特技生は、芸術体育要員となります。
- ・大衆芸能の芸能人の場合は、軍隊と言っても一般の兵士ではありません。
- ○ 2「軍隊に入る」というのは、一般的には陸軍です。
- ・海軍、空軍、海兵隊は志願制です。
- ・軍隊の勤務期間は、現在、陸軍は18か月です。
- ○ 3 軍隊入隊後は、まず訓練所で基本のトレーニングを受けます。
- ・基本の戦闘技術を身に着けるのが目的です。
- ・実弾の射撃訓練もあります。
- ○ 4 訓練終了後、所属の部隊に配属されます。
- ○ 5 主な任務は『警戒』です。
- ・24時間の監視体制です。
- ○ 6 軍隊での生活スケジュール
- ・軍隊の生活は、各部隊によって、若干の差はありますが、
- ・携帯電話の所持と使用は、現在、個人整備の時間(休憩時間)のみ認められています。
- ・食事は、味はともかく、お腹はいっぱいになります。
- ○ 7 勤務は、基本週5日で、休暇や面会が認められています。
- ・休暇は、陸軍の場合、1年6か月で24日の休暇があります。
- ・家族の面会は、軍の施設内で、1週間から2週間に1回程度、許可されます。
- ○ 8 軍に勤務すると給与がもらえます。
- ・陸軍の勤務期間18か月で総額2000万ウォンほどになります。
- ・軍隊に入隊中の生活必需品は、以前は支給されました。
- ○ 9 軍隊へのスマホの持ち込みが許可され、軍隊生活は大きく変わりました。
- ○ 10 以前は、上官からの理不尽な命令や暴力は当たり前でした。
- ○ 11 以前に比べて、軍隊での勤務期間は大幅に短縮されました。
- ・韓国では、急激な少子化が進んでいて、子供の数が減っています。
1 韓国では、健康な男子は、兵役は義務[国民役]です。
最近は女性の社会進出が進んでいます。職場では男女平等なのに、なぜ男性だけに兵役義務があるのか、これは逆差別だ、という声も聞かれるようになっています。
軍隊の入隊時期は、満20歳から28歳までです。
以前は満30歳まででしたが、現在は28歳までとなっています。
一般的には、大学に入学後、1年から2年後に休学して、入隊する場合が多いです。遅く入隊すると、体力的にきつくなりますし、上官が年下になるという心理的な葛藤が生まれるからです。韓国では年齢の上下は重要です。
満19歳になると徴兵検査を受けます。
兵役判定検査の結果に応じて、1級から7級の身体等級に分けられます。
1級から3級は現役
4級は補充役
5級は戦時勤労役
6級は兵役免除
7級は判定不可で再検査です。
現役は、一般の兵役につきます。
補充役は、やせすぎや太りすぎ、低学力(低学歴)などの理由で、軍勤務が全く無理ではないですが、通常は他の業務で代替をします。そして現役の人数が足りない場合、軍勤務に編入します。
戦時勤労役は、一般軍勤務は不可能なため、事実上の兵役免除ですが、戦時には徴兵されます。
徴兵検査、身体検査の結果、現在10%ちょっとが兵役免除となっています。
免除の条件は
・身長146cm以下、
・酒や薬で中毒症状がある者、
・性転換をした者、
・外国から韓国に帰化した者、
・扶養家族のいない孤児、
・自分1人で生活のできない者、
・コンクール優秀成績者、
・障害等級1級~3級、
・日常生活に支障のある疾患者、
・その他、身体や精神的状況によって、
大財閥の子息は、兵役免除率が35%くらいだそうです。
つまり、約3人に1人が『兵役逃れ』をしています。政治家の子息もそうですが、権力者やお金持ちが『兵役逃れ』をしているというのは、韓国では常識です。
これでも以前に比べると、だいぶ減っていますけど。
芸術や体育の分野で、国威宣揚、あるいは芸術暢達に寄与した特技生は、芸術体育要員となります。
特技生は、各自がその分野で励みます。つまり、軍の勤務は免除です。体育分野では、オリンピックでメダルを取る等、基準があります。しかし、大衆芸術は、芸術特技生に入りません。ですので、BTSは、免除の基準を満たさないため、特別に免除すべきか議論になりましたが、結局、法改正等はせず、入隊となります。
大衆芸能の芸能人の場合は、軍隊と言っても一般の兵士ではありません。
演芸兵士と言って、あちこちの部隊で開かれる慰労目的のコンサートなどに出演するだけで、一般的な軍の勤務は行いません。その上、一般の兵士より休暇も2倍以上多いため、公平性の面で問題があるのではないかと、テレビなどでも時々取り上げられています。
2「軍隊に入る」というのは、一般的には陸軍です。
海軍、空軍、海兵隊は志願制です。
海兵隊は訓練も厳しく、勤務も大変ですが、自ら海兵隊に志願するというのは、それだけの責任感があるということで、社会に出てからも、それなりに認められる存在となります。しかし、海兵隊に志望しても、面接や健康診断などでふるいにかけられ、合格率は20%くらいです。
軍隊の勤務期間は、現在、陸軍は18か月です。
海兵隊も18か月、海軍20か月、空軍22か月、社会服務要員21か月です。
補充役は、通常、社会服務要員として自宅からの通い勤務になります。社会服務要員は、主に、役所などで公務員の仕事をします。
3 軍隊入隊後は、まず訓練所で基本のトレーニングを受けます。
陸軍の場合、5週間が訓練期間です。2週間は講義、3週間が実地です。
基本の戦闘技術を身に着けるのが目的です。
銃の使い方や管理のしかた、警戒のしかた、戦闘のしかた、20kgの装備を背負って20kmの行軍訓練等です。
実弾の射撃訓練もあります。
これは軍隊でしか経験できません。
手りゅう弾の訓練もありますが、手りゅう弾は本物を爆発させることはしません。
4 訓練終了後、所属の部隊に配属されます。
配属は、どこになるかわかりません。部隊は、大部分、韓国の北のほうにあるので、38度線近くに配属になる人が多いですが、そうでない部隊になる人もいます。38度線に近い江原道(カンウォンド)の山のほうに配属になると、冬は寒く、マイナス30度近くになることもあります。また、雪がたくさん降るので、雪かきだけでも大変です。逆に、運転兵といって、トラックなど車の運転をする兵になると、一般の兵士より勤務はかなり楽です。配属はすべて運です。
5 主な任務は『警戒』です。
つまり、見張りです。
軍隊には、高度な技術や知識を必要とする部隊や兵士もいますが、そのような部隊や兵士は、皆、職業軍人たちです。
兵役で勤務する場合は、高度な知識や技術がなく、また経験もないので『警戒』勤務となります。単純な勤務ですが、重要な任務です。
24時間の監視体制です。
韓国の軍隊は、北の侵入を防ぎ、国を守るのが目的です。怪しい動きがないか、常に監視しています。
そして、北からの侵入があった場合には、その場で戦闘態勢に入ります。
実際には、そのような場面は、ほとんどありませんが。
6 軍隊での生活スケジュール
軍隊の生活は、各部隊によって、若干の差はありますが、
6時起床
7時に朝の点呼、そのあと朝食
12時~13時 昼食
17時30分~18時30分 夕食 そのあと個人整備時間(休憩時間)
21時30分 夜の点呼
22時 就寝
携帯電話の所持と使用は、現在、個人整備の時間(休憩時間)のみ認められています。
しかし、今後は、24時間所持可能としていく方針です。所持が可能といっても、いつでも自由に使えるわけではなく、勤務時間中の使用には制限がかかります。
食事は、味はともかく、お腹はいっぱいになります。
食事も以前に比べると、かなり改善されています。
7 勤務は、基本週5日で、休暇や面会が認められています。
しかし、夜間勤務や連続勤務、また緊急事態などもあり、必ずしも土日が休みとはなりません。しかし、休みの日にちは確保されます。
休暇は、陸軍の場合、1年6か月で24日の休暇があります。
所属の部隊にもよりますが、入隊後、6か月過ぎると、休暇を取ることができます。もちろん許可が必要です。そして、外出や外泊も許可をもらえばできますが、外出だけでも休暇1日消化、外泊で休暇2日消化になります。
家族の面会は、軍の施設内で、1週間から2週間に1回程度、許可されます。
部隊によって面会室は違います。
8 軍に勤務すると給与がもらえます。
給与は、陸軍に入りたての兵士で、2023年には、月に60万ウォン、ここに政府支援金が30万ウォン、合わせて90万ウォンがもらえます。勤務期間に応じて階級が上がれば、給与も上がります。
給与の金額は、毎年のようにどんどん上がっています。20年前には、入隊したての兵士の月給は1万ウォンとかでしたから、隔世の感があります。
陸軍の勤務期間18か月で総額2000万ウォンほどになります。
軍にいる間は、そもそもお金をほとんど使わないので、除隊するまでに、けっこうな額の貯金ができます。
軍隊に入隊中の生活必需品は、以前は支給されました。
以前は、たばこから夜食用のインスタントラーメン、洗面用具やひげそり、皆、支給品として、かなり支給されました。ですので、軍隊に入るというのは、体ひとつ持って行くということでしたが、今は、スマホの持ち込みもOKになり、また、最近は、コロナの影響もあり、身の回りの物は、全て自分で準備して入隊します。今は、支給品ではなく、給料としてお金でもらうようになりました。
9 軍隊へのスマホの持ち込みが許可され、軍隊生活は大きく変わりました。
2020年7月から許可されました。
今、軍隊に行くというのは、自由に外に出られない、というのがストレスで、以前のように、外部と完全に遮断された場所でプライバシーもなく、訓練が厳しく肉体的にきついとか、理不尽な命令をしたり暴力をふるう上官がいて精神的、肉体的に耐えられないとか、そういうことはありません。
10 以前は、上官からの理不尽な命令や暴力は当たり前でした。
しかし、2000年代に、いじめや暴力に悩んだ兵士の自殺が相次いでマスコミで報道され社会問題になったことや、また、人権尊重の時代になったこともあり、今では、軍隊内でのおおっぴらな暴力や、あからさまに理不尽な命令はほとんどなくなりました。各部隊には定期的に行政機関から調査が入り、聞き取り調査も行われています。
しかし、それでも、様々な嫌がらせはなくならず、むしろ隠れて行われるようになり、軍隊内でいじめを苦にして自殺したというニュースは、今も時々ニュースで出ます。
11 以前に比べて、軍隊での勤務期間は大幅に短縮されました。
陸軍は、今は1年6か月ですが、20年前には2年2か月、1970年代には3年3か月でした。また、勤務自体も楽になっています。なにより、今は、外部といつでも連絡ができるスマホも持ち込めます。しかし、そのため、「これでは、いざ本当に戦争になった時に、軍隊としてまったく役に立たないのではないか」という専門家の意見も多くなっています。
韓国では、急激な少子化が進んでいて、子供の数が減っています。
このまま子供の数が減って行くと、軍隊を維持できなくなるため、軍勤務の期間を延ばそうという議論が始まっています。