韓国語の漢字語規則「頭音法則(語頭のㄹの脱落)」
韓国語の漢字は、原則、ひとつの漢字に読み方はひとつですが、ㄹ、ㄴが語頭に来た時には、音が脱落したり発音が変わったりすることがあります。そのルールを理解していると、漢字の言葉を覚える時に覚えやすくなります。このルールを「頭音法則」と言います。
ここでは「頭音法則」について詳しく解説します。そして「頭音法則」が適用される漢字の一覧もつけましたので、漢字語の学習に役立ててください。
目次 ▼
- ○ 1 頭音法則
- ・ㄹが語頭に来た時、ㄹの音が脱落したりㄴに変わる
- ・語のはじめのㄹの脱落は17世紀頃から民衆の間で自然にはじまった
- ・ㄴ が語頭に来た時、ㄴ が落ちることがある
- ○ 2 頭音法則の漢字一覧
- ・➀ 語頭の ㄹ が脱落する漢字
- ・➁ 語頭の ㄹ が ㄴ に変わる漢字
- ・➂ 語頭の ㄴ が脱落する漢字
- ○ 3 日本語も、語頭に「ら行」は来なかった
- ・マクドナルドのキャラクター「ドナルド」は「Ronald」
- ・「真っ赤なお鼻のトナカイさん」というクリスマスの歌は本来「ルドルフ」の歌
- ・「ら行はじまり」の『外来語イメージ』をうまく使ったのがタカラ
- ・「ら行」はじまりの命名は今でも難しい部分がある
- ・避ける音が日韓同じ
- ○ ※ 『発音』『文法』総整理
- ○ ☆ 韓国語を楽しく学んでみませんか?
1 頭音法則
ㄹが語頭に来た時、ㄹの音が脱落したりㄴに変わる
「来」は「래」です。ですので「元来」は「원래」です。発音は[월래]です。
しかし「来年」のように「ㄹ」が語頭に来ると「ㄹ」の音が「ㄴ」に変わって「내년」となります。
世界で1億人いると言われる「李」さんは本来「리」です。北朝鮮では「리」ですが、韓国では「이」です。「ㄹ」の音が落ちます。ただ、英語表記は韓国でも「Lee」です。
語のはじめのㄹの脱落は17世紀頃から民衆の間で自然にはじまった
正式には、1933年、맞춤법(正書法)改定により「語のはじめのㄹは脱落するかㄴに変わる」と規定されました。
しかし、歴史的由来のある名字まで強制的に発音を変えてしまうのはおかしいと考える人たちが裁判を起こし、2007年に最高裁で「名字に限り語頭のㄹを認める」という判決が出ました。そのため、数は少ないですが、語頭のㄹを復活した리さんや 류さんもいます。
ㄴ が語頭に来た時、ㄴ が落ちることがある
「女」は「녀」です。ですので「男女」は「남녀」です。しかし語頭に来るとㄴが落ちて「女子」は「여자」となります。「여자」で「女の人」という意味です。
ㄴ音が脱落するかしないかは慣用です。脱落する漢字としない漢字があります。
2 頭音法則の漢字一覧
発音の変わる漢字のうち、初級、中級レベルのものを挙げておきます。
ここにない動詞も、母音が「아、애、오、우」の時「ㄹ」が「ㄴ」に変わり、母音がそれ以外の時は「ㄹ」が脱落して「ㅇ」になります。
➀ 語頭の ㄹ が脱落する漢字
【良】⇒ 불량(不良)、양심(良心)
【量】⇒ 강수량(降水量)、양산(量産)
【両】⇒ 양면(両面)
【麗】⇒ 고려(高麗)、여수(麗水)〔地名〕
【旅】⇒ 여행(旅行)
【歴】⇒ 이력서(履歴書)、역사(歴史)
【力】⇒ 노력(努力)、역량(力量)
【練】⇒ 미련(未練)、연습(練習)
【連】⇒ 관련(関連)、연락(連絡)
【廉】⇒ 저렴(低廉:安いこと)、염가판매(廉価販売:格安販売のこと)
【令】⇒ 명령(命令)、영장(令状)
【領】⇒ 대통령(大統領)、영토(領土)
【霊】⇒ 유령(幽霊)、영혼(霊魂)
【列】⇒ 행렬(行列)、열차(列車)、계열(系列)〔パッチムのない語に続く時も열〕
【礼】⇒ 실례(失礼)、예의(礼儀)
【例】⇒ 비례(比例)、예(例)
【料】⇒ 재료(材料)、요리(料理)
【療】⇒ 치료(治療)、요양(療養)
【龍】⇒ 용(龍)
【柳】⇒ 유(柳:姓のひとつ)
【劉】⇒ 유(劉:姓のひとつ)
【流】⇒ 전류(電流)、유행(流行)
【留】⇒ 보류(保留)、유학(留学)
【類】⇒ 종류(種類)、유사(類似)
【倫】⇒ 불륜(不倫)、윤리(倫理)
【輪】⇒ 연륜(年輪)、윤곽(輪郭)
【律】⇒ 법률(法律)、율동(律動)
【率】⇒ 능률(能率)、비율(比率)〔パッチムのない語に続く時も율〕、솔직(率直)[割合の意味以外では솔]
【陵】⇒ 능(陵:王や王妃の墓のこと)
【凌】⇒ 능가(凌駕)
【立】⇒ 고립(孤立)、입장(立場)
【離】⇒ 거리(距離)、이별(離別)
【裏】⇒ 뇌리(脳裏)、이면지(裏面紙:裏紙のこと)
【利】⇒ 편리(便利)、이용(利用)
【理】⇒ 요리(料理)、이유(理由)
【履】⇒ 이력서(履歴書)
【李】⇒ 이(李:姓のひとつ)
【臨】⇒ 군림(君臨)、임시(臨時)
【林】⇒ 신림(山林)、임(林:姓のひとつ)
➁ 語頭の ㄹ が ㄴ に変わる漢字
【羅】⇒ 신라(新羅)、나침반(羅針盤)
【裸】⇒ 전라(全裸)、나체(裸体)、적나라(赤裸々)
【落】⇒ 탈락(脱落)、낙엽(落葉)
【楽】⇒ 오락(娯楽)、낙관적(楽観的)[音楽の時は악]음악(音楽)、악기(楽器)
【来】⇒ 원래(元来)、내년(来年)
【冷】⇒ 급랭(急冷)、냉방(冷房)
【路】⇒ 도로(道路)、노선(路線)
【老】⇒ 경로(敬老)、노인(老人)
【労】⇒ 피로(疲労)、노동자(労働者)
【露】⇒ 폭로(暴露)、노출(露出)
【録】⇒ 기록(記録)、녹화(録画)
【論】⇒ 결론(結論)、논리적(論理的)、의논(議論)は例外
【累】⇒ 누적(累積)
➂ 語頭の ㄴ が脱落する漢字
語頭がㄹの漢字は全て頭音法則が適用されますが、 語頭がㄴの漢字で頭音法則が適用となる漢字は一部のみです。慣用的に決まっています。
ここでは一般的に使用する漢字の中で、語頭のㄴが脱落する漢字を全て挙げておきます。
初級レベルでは、はじめの2つ、中級レベルでは、その次の3つを覚えておけば十分です。
【女】⇒ 남녀(男女)、여자(女子)
【年】⇒ 학년(学年)、연상(年上)
【念】⇒ 기념(記念)、염두(念頭)
【溺】⇒ 탐닉(耽溺)、익사(溺死)
【匿】⇒ 은닉(隠匿)、익명(匿名)
【泥】⇒ 오니(汚泥)、이수(泥水)
【尼】⇒ 승니(僧尼)、이승(尼僧)
【捻】⇒ 염자(捻挫)
【寧】⇒ 안녕(安寧)、영일(寧日)
【獰】⇒ 영맹(獰猛) 獰猛くらいでしか使いません。
【紐】⇒ 혁뉴(革紐)、유대(紐帯)
【戮】⇒ 육살(戮殺) 살육(殺戮)は例外
【涅】⇒ 열반(涅槃) 涅槃くらいでしか使いません。
3 日本語も、語頭に「ら行」は来なかった
語頭の「ら行」は発音しにくく、親しみにくいため、名前をつける時も、以前は、語頭の「ら行」は避ける傾向がありました。
マクドナルドのキャラクター「ドナルド」は「Ronald」
世界のどこへ行っても「Ronald」ですが日本だけ「ドナルド」です。
これは1971年に日本マクドナルドがスタートする時、日本では「ロナルド」では親しめないということで「ドナルド」にしたからです。マクドナルドという名前も、日本人に発音しやすいようにMc Donald’sをマクドナルドにしています。名前をつける際に「英語の発音に近いように」とはそもそも考えていませんでした。
「真っ赤なお鼻のトナカイさん」というクリスマスの歌は本来「ルドルフ」の歌
元々は「Rudolph the Red-nosed Reindeer」という題名で、サンタクロースのそりをひくトナカイの9頭目「ルドルフ」の歌です。しかし日本語の歌詞には「ルドルフ」という名前は出て来ません。名前を入れると歌に合わなくなるから省略したとも言われていますが、「ルドルフ」では日本の子供は親しめないですよね。
日本では、昔は「ら行」はじまりをはっきり避けていました。「ら行」はじまりの言葉がないことはなかったですが、外来語イメージが強く、親しみやすい感じではありませんでした。
「ら行はじまり」の『外来語イメージ』をうまく使ったのがタカラ
タカラがバービー人形の日本版として「リカちゃん人形」を1967年に出しました。
お母さんが日本人、お父さんがアメリカ人というハーフの設定で名前もカタカナです。
リカちゃんという名前は、当時としてはなかなかの冒険だったらしいのですが、これが大ヒットしました。
語頭に「ら行」が来る名前のイメージが大きく変わりました。リカちゃんのヒットで「おしゃれ」なイメージになりました。今では「れみ」とか「りな」とか「ら行」はじまりの名前は普通にたくさんありますよね。
「ら行」はじまりの命名は今でも難しい部分がある
2003年にあさひ銀行と大和銀行が合併して「りそな銀行」となりました。
結構有名な命名会社に名前つけてもらったらしいのですが、「ら行」はじまりということもあって、当時、いろいろと話題になりました。
もう少し親しめる名前にすればよかったのではないかなぁと思いませんか?
「ら行」はじまりの名前は今も難しい部分がありますよね。
避ける音が日韓同じ
日本語の「ら行」と韓国語のㄹ(L)は微妙に音が違いますが、歴史的に「ら行はじまり」を避けた日本と、ㄹ(L)ではじまる音を避けた韓国、実によく似ています。日本語と韓国語の近さを感じます。
日本語と韓国語は声の出し方が同じです。他の外国語は発声方法が違うのでマスターするのが難しいです。例えば英語の発音ですが、日本人がどう頑張ってもネイティブ発音のようにならないのは、発声方法がそもそも違うからです。
しかし日本語と韓国語は発声方法が同じなので、日本人が日本語を話すように発音すれば韓国語の音になります。韓国人が日本語を話す時も同じです。
日本語と韓国語は発声のしかたが同じなので、発音しにくい音も同じなんですね。なかなか興味深いです。
※ 『発音』『文法』総整理
韓国語の『発音』『文法』を、わかりやすく解説しています。
今まで学習した中で、よくわからないところ、不安のあるところは、こちらの徹底解説と例文で、しっかりと整理しておいてください。
関連記事:韓国語のまとめ「文字・発音」編
関連記事:韓国語のまとめ「文法」編
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監修者
<出身大学>
新丘大学家庭教育学部
<略歴>
ソウル出身。韓国語教育が専門分野。2006年に来日し、2011年より韓国語教室ハングルちゃんの共同経営者兼主任講師。 生徒たちが積極的に参加しやすい雰囲気を作り、能力を最大限に引き出す指導スタイルが評判。
内田 昌弘 (うちだ まさひろ)
韓国語教室ハングルちゃん代表
<資格>
通訳案内士韓国語(国家資格)
日本語教育能力検定
高等学校と中学校教員1種免許状(数学)
<出身大学>
京都大学農学部卒業
<略歴>
東京生まれ千葉県育ち。韓国在住(歴)15年、1996年から2006年までの11年間は、韓国最大規模の語学学校(YBM学院)にて日本語部門の教授部長。2011年6月に韓国語教室ハングルちゃんをスタート。