韓国の大学入学試験日(修能・スヌン)の風景や家族たち
韓国で毎年11月に行われる、日本の「大学入学共通テスト」に当たる「大学修学能力試験(修能・スヌン)」の風景は、日本とはだいぶ違います。ここでは「修能・スヌン」当日の様子や、その日の直前の様子をご紹介します。
目次 ▼
- ○ 1 日本の大学入学試験の「共通テスト」に当たる試験は「修能(수능・スヌン)」
- ・毎年11月中旬の平日に行われる
- ・国の大事なイベントと言ってもいいくらい、受験生以外の人たちも気をつかう
- ・試験は日本の共通テストと同じマークシート式
- ・試験の出題自体は年々やさしくなっている
- ・最近は「修能」が全受験生一発勝負ではなくなっている
- ○ 2 試験会場まで家族がついて来ることも少なくない
- ・付き添いで来た家族が試験会場の外で必死に祈る姿が見られる
- ・同じ高校の先輩たちを応援に来た後輩たちの姿が見られる
- ・試験会場を間違えたり乗るバスを間違えた受験生は警察がパトカーや白バイで緊急輸送
- ・最近は携帯電話の持ち込みが問題
- ○ 3「修能」が近づくと、家族や親戚、先輩や後輩や友人達がプレゼントをする
- ・「あめ」とか「もち」をあげるのが一般的
- ・フォークをあげることもある
- ・有名な精神安定の薬の「修能用」の特別なもの
- ・この時期だけのポテトチップスの特別バージョン
- ・み~んな『대박기원(大当たり祈願・高得点祈願)』
- ○ 4 試験の日にはわかめスープは食べない
- ・ワカメはぬるぬるしていて滑るから
- ・本人だけでなく、両親や兄弟、その受験生を応援している人は皆食べない
- ○ ※ 韓国語を楽しく学んでみませんか?
1 日本の大学入学試験の「共通テスト」に当たる試験は「修能(수능・スヌン)」
正式名称は「大学修学能力試験(대학수학능력시험)」、略して「修能試験(수능시험)」「修能(수능)」です。
毎年11月中旬の平日に行われる
以前は12月に行われましたが、雪が降って交通が麻痺することがあり、11月に行われるようになりました。
国の大事なイベントと言ってもいいくらい、受験生以外の人たちも気をつかう
受験生のために試験日当日は、会社も時差出勤に協力しますし、受験会場近くでは騒音を出さないために、すべての工事を中止し、飛行機やヘリコプターの飛行も禁止です。
全受験生が平等に公平に落ち着いて試験を受けられるよう、すべての国民が協力します。
試験は日本の共通テストと同じマークシート式
韓国では選択肢のある試験を「客観式」といい、選択肢のない試験を「主観式」といいます。「修能」はマークシートですから客観式です。
試験の出題自体は年々やさしくなっている
高校教育の範囲を逸脱した難しい問題は出なくなっています。韓国では学校以外の塾や予備校、家庭教師などにかかる教育費(私教育費と言います)の負担が問題となっています。
塾通いをしなければいい大学には入れないというのは常識です。そんな風潮を改めるため、ちゃんと高校で勉強していれば「修能試験」対策は十分だとするためです。
出題がやさしくなり平均点も上がるため、難関大学に入るためには全科目満点近い点数が要求されます。ケアレスミスは許されません。それはそれで大変なことです。
最近は「修能」が全受験生一発勝負ではなくなっている
一発勝負に対する批判もあり、今では高校の内申点のみで進学する人が60%を超えています。
2 試験会場まで家族がついて来ることも少なくない
もちろんひとりで来たり友達同士で来る人も多いですが、受験生が親の期待を一身に背負っていることが多いです。
付き添いで来た家族が試験会場の外で必死に祈る姿が見られる
試験会場で祈らず、普段通っている教会や寺で祈ったり、ご利益があると言われる場所で祈る人も多く、何も祈らない親はいないと言ってもいいほどです。
でも、これは、受験生にはすごいプレッシャーです。試験中に倒れる人も出ますし、あまりのプレッシャーに自殺する高校生も出ます。
同じ高校の先輩たちを応援に来た後輩たちの姿が見られる
プラカードを持ってきて応援することが多いです。
試験会場を間違えたり乗るバスを間違えた受験生は警察がパトカーや白バイで緊急輸送
これは日本ではありえない光景かもしれませんが、韓国では警察も公務員ですから国民の大事なイベントに最大限協力する義務があると考えます。バスに乗るのが面倒で警察を呼ぶ、そんな悪い受験生はいません。
最近は携帯電話の持ち込みが問題
試験会場に携帯電話の持ち込みはできません。しかし母親の携帯電話がお弁当といっしょに間違ってかばんに入ってしまい、その携帯電話が鳴ったことで退室となる受験生が毎年必ずいます。
3「修能」が近づくと、家族や親戚、先輩や後輩や友人達がプレゼントをする
修能プレゼント(수능선물)と言います。試験を受ける受験生には試験でいい点数がとれるように、みんなで応援します。
「あめ」とか「もち」をあげるのが一般的
どうして「あめ」や「もち」をあげるのか、意味はわかりますよね。よくくっつくようにです。「合格した」「受かった」という時に、韓国では「くっついた(붙었다)」と言います。もちは修能プレゼントの定番です。
フォークをあげることもある
フォークは「修能」の象徴のようによく使われています。フォークで「突く(찍다)」と、マークシートに印を「つける(찍다)」が韓国語では同じ発音なので、迷った時に選択肢をよくつけられるように(勘が当たるように)という意味でフォークをプレゼントします。
「あめ」や「フォーク」が定番ですが、最近は修能プレゼントもいろいろな物が出ています。
有名な精神安定の薬の「修能用」の特別なもの
「修能丸」と言います。これを飲んで、試験中は落ち着いて、いい点数取れるようにと贈ります。ちょっと高価ですが実用的で人気のプレゼントです。
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この時期だけのポテトチップスの特別バージョン
『대박(テバク)』というのは訳すのが難しいですが、パチンコなどで大当たりして玉がジャラジャラ出るような感じです。試験で『대박』と言うのは、マークシートを勘良く印をつけたおかげで正解がジャラジャラ出てものすごく高得点を得るような感じです。そんな『대박기원(大当たり祈願・高得点祈願)』です。
み~んな『대박기원(大当たり祈願・高得点祈願)』
4 試験の日にはわかめスープは食べない
韓国では、誕生日には「わかめスープ」ですが、試験の日は反対です。
ワカメはぬるぬるしていて滑るから
試験で滑らないよう食べません。日本でも受験生の前で「滑る」は禁句ですよね。
本人だけでなく、両親や兄弟、その受験生を応援している人は皆食べない
もちろん、そんな迷信を本気で信じている人はいませんが、でも、やっぱり頑張っている受験生が近くにいると気持ち的にそうなりますよね。
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監修者
<出身大学>
新丘大学家庭教育学部
<略歴>
ソウル出身。韓国語教育が専門分野。2006年に来日し、2011年より韓国語教室ハングルちゃんの共同経営者兼主任講師。 生徒たちが積極的に参加しやすい雰囲気を作り、能力を最大限に引き出す指導スタイルが評判。
内田 昌弘 (うちだ まさひろ)
韓国語教室ハングルちゃん代表
<資格>
通訳案内士韓国語(国家資格)
日本語教育能力検定
高等学校と中学校教員1種免許状(数学)
<出身大学>
京都大学農学部卒業
<略歴>
東京生まれ千葉県育ち。韓国在住(歴)15年、1996年から2006年までの11年間は、韓国最大規模の語学学校(YBM学院)にて日本語部門の教授部長。2011年6月に韓国語教室ハングルちゃんをスタート。