韓国における、薄れる儒教意識について、韓国人視点で紹介します。

目次
- ○ 韓国では、伝統的に、親が年を取ったら長男が面倒を見るのが当たり前でした
- ・1990年代には「親の面倒を見るのは当たり前」と思う人が90%以上でした
- ・しかし、今では20%以下に減っているそうです。
- ・韓国の年金制度は、90年代以降、少しずつ形になってきたので、今のお年寄りは、年金をもらえない人も多いです。
- ・福祉施設で給食をもらうために長い列を作っています。
- ○ 年金をもらえないお年寄りに、政府は基礎年金を支給しています。
- ・生活手段のない老人のほとんどが、リサイクルごみを拾い、それをお金にして生活しています。
- ・韓国では、このような老人が増え、社会問題になっています。
- ・リサイクルごみを集めてお金にして、なんとかその日その日を過ごしている老人が、推計で175万人もいるそうです。
- ○ 韓国は、老人の貧困問題が深刻です。
- ・韓国では、老人の貧困率は50%近くになり、2人に1人が貧困老人です。
- ・2018年には老人貧困率世界一でした。
- ・しかし、貧困老人の全てが、元々貧困だったわけではありません。
- ・韓国の老人は、「子供に財産を相続すると飢え死にし、相続しないと殴られ死ぬ」そんな悪い冗談もあるくらいです。
- ○ それでも長男を大切にします。
- ・2004年には「大韓民国で長男として生きていく」という本がベストセラーでした。
- ・大切に育てた長男は、両親の世話どころか両親の財産をもらうことだけしか考えていません。
- ・逆に、娘たちは親孝行が多いので、最近は、生まれる子供が男の子より女の子のほうが喜ばれます。
- ・このごろは、親不孝な長男と親孝行な娘たち、というケースがとても増えています。
- ・それでも、昔からの意識が変わらない60代以上の親たちは、長男ばかりを大切にします。
- ○ 親を老人ホームに入れるのは親不孝です。
- ・以前は、自分の子供や、長男の嫁が親の世話をするのが一般的でした。
- ・それに伴い、韓国の療養院(老人ホーム)と療養病院の数は、どんどん増えています。
- ・療養院と言えば、以前は田舎にあるイメージでしたが、最近は、ソウルや釜山などの街中にどんどんできています
- ・韓国の療養院のイメージは、とても悪いです。
- ・認知症や、あるいは、脚や腰が悪くて一人で立って歩けなった時には療養院に入ります。
- ・夕食は5時過ぎに来ます。夕食を食べると何もすることがありません。
- ・『療養病院 親不孝ではない、親孝行です。』高級療養院の宣伝です。
- ○ 電車やバスで、老人に席を譲らない人はいませんでした。
- ・日本の優先席を、韓国では「老弱者席」と言います。
- ・老人が乗って来たのに、若者が「老弱者席」からどかないということは、韓国ではありえませんでした。
- ・老人たちは、「老弱者席」でなくても、強い態度で若者に席を譲らせました。
- ・しかし、最近は「老弱者席」で平気で寝ている若者も多く、ネットのあちこちに写真が載せられて非難の対象になっています。
韓国では、伝統的に、親が年を取ったら長男が面倒を見るのが当たり前でした
ですから、以前は、男の子を生んで育てさえすれば、老後の心配はありませんでした。
しかし、そのような意識が急激に変化しています。
1990年代には「親の面倒を見るのは当たり前」と思う人が90%以上でした
しかし、今では20%以下に減っているそうです。
そして、親のほうも、自分の老後は自分で見ると考えるようになって来ました。
韓国の年金制度は、90年代以降、少しずつ形になってきたので、今のお年寄りは、年金をもらえない人も多いです。
そのため、自分の子供に面倒を見てもらえないお年寄りは、とても貧しい生活をしています。
福祉施設で給食をもらうために長い列を作っています。
これは、豊かになった韓国の、もうひとつの姿です。
老人の自殺率も、2000年以降、急上昇し、以前の3倍になりました。韓国は、社会の変化が急過ぎて、国のシステムがついていっていません。
そして、今、日本以上に、少子高齢化が急速に進んでいます。未来が心配になります。
年金をもらえないお年寄りに、政府は基礎年金を支給しています。
基礎年金という名目で、政府は生活支援をしていますが、息子のいる人には支給しません。息子がいると言っても、親の面倒を見ない息子もいます。そのため、息子に面倒を見てもらえない老人は、誰も面倒をみてくれず、基礎年金という生活支援金ももらえません。
生活手段のない老人のほとんどが、リサイクルごみを拾い、それをお金にして生活しています。
1か月間毎日、1日中拾い続ければ、30万ウォンくらいになるそうです。お金になるゴミは、缶や瓶、新聞紙、ダンボール、古着などです。
それでも、体が元気なうちはいいのですが、病気になった時が問題です。面倒を見てくれる人もいないし、病院に行くお金もありません。
韓国では、このような老人が増え、社会問題になっています。
リサイクルごみを集めてお金にして、なんとかその日その日を過ごしている老人が、推計で175万人もいるそうです。
韓国は、老人の貧困問題が深刻です。
老人貧困率とは、老人人口のうち、中位所得(平均所得)の50%以下の比率のことです。
韓国では、老人の貧困率は50%近くになり、2人に1人が貧困老人です。
2000年以降、ずっと40%を上回っている状態です。
2018年には老人貧困率世界一でした。
2018年OECD38か国対象65歳以上老人基準
老人貧困率は、老人人口中 中位所得の50%以下の人の比率
1位韓国、2位ラトビア、3位エストニア、4位メキシコ、5位リトアニア、6位豪州、7位アメリカ、8位イスラエル、9位日本、10位チリ、OECD平均
50%近かった最悪の時期からは多少改善されましたが、それでも、OECD加盟国中1位です。ちなみに日本は20%で9位です。
しかし、貧困老人の全てが、元々貧困だったわけではありません。
財産はあったのですが、死んでから相続問題が起きるのも面倒だからと、生きているうちに、自分の息子や娘に財産を相続したところ、その後、連絡が途絶え、世話をしてくれる人がいなくなり、貧困になった老人もかなりいます。
もちろん、相続する前は、息子や娘たちは頻繁に訪れ、あれこれ面倒を見てくれました。そして、相続したあとも、ちゃんと世話はする、面倒を見る、そう約束したにもかかわらず、財産をもらったら、それっきりです。全くとんでもない話で、ひと昔前なら、ありえない話なのですが、現在の韓国では、決して珍しい話ではありません。
韓国の老人は、「子供に財産を相続すると飢え死にし、相続しないと殴られ死ぬ」そんな悪い冗談もあるくらいです。
不孝者(親不孝)防止法 '贈与財産回収' 可能
そのため、財産を相続したあと、自分の親の面倒を見ない場合、その財産を取り戻すことができるよう、親不孝防止法の草案が政府から出され、論議が行われています。
しかし、なかなか、この法案は国会を通りません。今回も難しいと思いますが、でも、そのくらい今の韓国は状況が深刻です。
それでも長男を大切にします。
韓国では、昔から大切なのは長男でした。長男がいないと祭祀もできませんし、自分たちの老後の世話をしてくれる人がいません
2004年には「大韓民国で長男として生きていく」という本がベストセラーでした。
あっと言う間に、時代が変わりました。
大切に育てた長男は、両親の世話どころか両親の財産をもらうことだけしか考えていません。
そんな親不幸な長男が増えています。
私の知り合いの母親は、その時70歳くらいでまだ元気でしたが、全財産を長男にあげました。しかし、その長男は、母親の世話どころか、母親を療養院(老人ホーム)に入れようとしました。そのため、その母親は未来を嘆いて衝動的に農薬を飲んで自殺してしまいました。
そんな悲しい話が、今の韓国には、たくさんあります。
逆に、娘たちは親孝行が多いので、最近は、生まれる子供が男の子より女の子のほうが喜ばれます。
少し前まで、日本では生まれてくる赤ちゃんは、男の子より女の子のほうが喜ばれる、と聞いても、韓国人は理解できなかったのですが、本当に変わりました。
また、これは、旅行関係の仕事をしている人に聞いたのですが、親子3世代で旅行をするというと、以前は、老夫婦の長男夫婦とその子供であることが一般的だったのですが、最近は、老夫婦の娘夫婦とその子供であることがほとんどだそうです。
このごろは、親不孝な長男と親孝行な娘たち、というケースがとても増えています。
それでも、昔からの意識が変わらない60代以上の親たちは、長男ばかりを大切にします。
娘たちにもらったお小遣いを、そのままこっそり長男に渡すようなケースもあります。いくら親孝行でも、娘たちは長男の足元にも及びません。
親を老人ホームに入れるのは親不孝です。
お年寄りが、一人で身の回りのことができなくなると、介護が必要ですよね。
以前は、自分の子供や、長男の嫁が親の世話をするのが一般的でした。
しかし、最近は核家族化が進み、また、共働きの夫婦も増え、親の介護をする人が急激に減っています。
それに伴い、韓国の療養院(老人ホーム)と療養病院の数は、どんどん増えています。
2010年の2281所から、2017年の3810所と急増し、2020年には4500所を越えました。
療養院(老人ホーム)と療養病院の違いは、専門の医療関係者がいるかいないかです。療養院(老人ホーム)は、医療関係者がいないので、価格は安いです。
療養院と言えば、以前は田舎にあるイメージでしたが、最近は、ソウルや釜山などの街中にどんどんできています
そのほうが、お見舞いにも行きやすいですし、何かあった時に、家族がすぐに駆けつけることができるためです。
しかし、雑居ビルの中に入っている療養院は、質の悪いところが多いです。
韓国の療養院のイメージは、とても悪いです。
療養院に親を入れるのは、ちょっと大げさに言うと、合法的姥捨てです。もちろん、そうではない高級療養院もありますが、一般的には、療養院に入ったら、あとは死ぬのを待つだけです。待つというより、療養院に入った老人たちは、こんな所で、こんなふうに生きているくらいなら早く死にたい、と思うようになるそうです。
認知症や、あるいは、脚や腰が悪くて一人で立って歩けなった時には療養院に入ります。
家で介護ができれば一番ですが、面倒を見る人がいません。家族が1日24時間介護をするのは無理な時代になりました。
療養院は、病院と同じように、大部屋にベッドがいくつかあるだけです。一日中、テレビがついています。基本は、病院と同じです。
個室もありますが、お金がかかります。療養院に入っても、看病人と呼ばれる人を雇わなければ、一人で歩けないのでベッドで寝ているだけです。大小便もベッドでします。看護士たちは、面倒なので、管をつなげてベッドで済ませられるようにしてしまいます。ひどい場合は、ベッドから落ちると危ないという理由で、ベッドにひもで結んでしまいます。そうなると、何もできません。
夕食は5時過ぎに来ます。夕食を食べると何もすることがありません。
夜、寝られない場合は、看護士が、点滴などに眠り薬を入れて眠らせます。この眠らせる薬を多用すると、頭が痴ほう症の老人と同じようになるそうです。ですので、韓国では、自分の親を療養院に入れるというのは、とても親不孝です。
でも、実際には、お金の問題もあって、他に方法がない、どうしようもない、という人も多いようです。
『療養病院 親不孝ではない、親孝行です。』高級療養院の宣伝です。
こんな宣伝があるということが、療養院が親不孝と思われている証拠ですよね。
ちなみに、一般の療養院は、都市部だと、一番安くて、月に100万ウォンくらいからです。100万ウォンの療養院は、看護士の質も低くなります。
電車やバスで、老人に席を譲らない人はいませんでした。
日本の優先席を、韓国では「老弱者席」と言います。
「老弱者席(노약자석)」は、「体の不自由な人(장애인・障碍者)」「老弱者(노약자)」「妊娠婦(임산부)」「幼乳児同伴者(영유아 동반자)」のための座席(자석)です。
老人が乗って来たのに、若者が「老弱者席」からどかないということは、韓国ではありえませんでした。
そもそも「老弱者席」には座りませんでした。「老弱者席」が空いていても、座らないで立っていました。
老人たちは、「老弱者席」でなくても、強い態度で若者に席を譲らせました。
若者たちは、素直に譲るのが当たり前でした。
しかし、最近は「老弱者席」で平気で寝ている若者も多く、ネットのあちこちに写真が載せられて非難の対象になっています。
そんな若者を注意すると、逆に何をされるかわからないので、今では、老人たちが若者たちを怖がっています。
以前には考えられないほど韓国が変わってしまいました。