韓国の「病院/入院」事情〔患者服、看病人〕
韓国の病院の基本のシステムは日本と同じです。身体の具合が悪かったりけがした時には、町中の医院へ行きます。そして、そこでは対応できないような病気やけがの時は、総合病院を紹介されます。
日本では、会話ではどちらも病院と言っていますが、医院と病院、正式には区別がありますよね。韓国では会話でも医院と病院を区別しています。
日本と韓国の病院のシステムはよく似ていますが、しかし、違うところもあります。ここでは、日本と違う、韓国の病院事情、入院事情をご紹介します。
目次 ▼
- ○ 1 韓国では入院すると患者服を着る
- ・デザインは病院ごとに違う
- ・子供も入院したら患者服
- ○ 2 入院したら身の回りの世話をしてくれる「付添人」が必要
- ・病院のベッドにはベッドの下に保護者用の簡易ベッドがある
- ・家族だけで付き添いできない時は専門の付添人(간병인・看病人)を雇う
- ○ 3 病院の面会時間が制限されるようになった
- ・保護者はいつでもOKというのが一般的
- ○ 4 医者も看護師も白衣は少なくなった
- ・水色とか薄いピンクとかが最近の主流
- ○ 5 韓国の医者はとても親切
- ・小児科の医者は皆明るい
- ○ 6 韓国で病院と言ったらソウルの『ビッグ5』
- ・ドラマにもよく出る一番大きな病院は「ソウルアサン病院(서울아산병원)」
- ・2番目が「サムソンソウル病院(삼성서울병원)」
- ・もし韓国で何かあったら『ビッグ5』のどこかに行ってください
- ○ 7 担当の医者は何度でも変更可能
- ・日本では同じ病院で医者を替えてもらうことはしない
- ○ 8 同じ医院(病院)に院長が2人も3人もいる
- ・「共同院長」といって2人とか3人とかが全員院長ということが韓国ではよくある
- ○ ※ 韓国語を楽しく学んでみませんか?
1 韓国では入院すると患者服を着る
入院中に着る服は、日本では自由みたいですが、韓国では「患者服」が当たり前です。患者服を着る理由は、衛生面の問題が一番大きいですが、韓国の病院の病室には、患者だけでなく、その保護者や付添い人など、いつも人がたくさんいます。そのため、誰が患者か区別するためにも必要なのだと思います。
一度病院で医者に理由を聞いたことがありますが「病院では、医者は医者の服を着るのが当然で、患者は患者の服を着るのが当然」ということでした。
デザインは病院ごとに違う
日本人にはパジャマに見えるみたいですね。
子供も入院したら患者服
子供用のサイズもあります。
2 入院したら身の回りの世話をしてくれる「付添人」が必要
韓国の病院で入院をすると、日本と同じで、病棟の看護師がいますが、韓国の看護師の場合は、注射をしたり血圧を測ったり、といった以外のことは何もしてくれません。患者の身の回りのことは、保護者がしなければなりません。患者が子供ならお母さんが、結婚している男の人なら奥さんが病室で患者といっしょに寝泊りして、身の回りの面倒を見ます
病院のベッドにはベッドの下に保護者用の簡易ベッドがある
保護者は、夜、簡易ベッドで寝ます。簡易ベッドは、昼間は面会者用の長椅子になります。これは、大部屋でも同じです。ですから、8人部屋なら、常に人が16人以上いることになります。韓国の病室の大部屋は、日本のようにカーテンで仕切られてはいません。そして、だいたいテレビが1台あって、いつもつけっぱなしです。そのため、けっこううるさいのですが、みんな慣れているのか、あまり気にしません。
別にたいした手術じゃなくても、保護者は必ずいます。そのため、次の日に手術を受ける旦那さんが簡易ベッドで寝て、付き添いの奥さんが患者用のベッドで寝てるということもあります。
家族だけで付き添いできない時は専門の付添人(간병인・看病人)を雇う
1日に何時間付き添いするかで料金が違いますが、安くても、ひと月に150万ウォン以上かかりますから、家族が入院すると韓国では肉体的に、そして金銭的に大きな負担です。
3 病院の面会時間が制限されるようになった
韓国の病院に入院すると、大部屋では静かに過ごすことが難しいです。部屋にひとつあるテレビは、いつもつけっぱなし、患者には必ず保護者(大人でも保護者と言います)がいますし、看病人(付添人)がいたり、面会に来る人も多く、いつも、ざわざわした雰囲気です。
それが、最近は、ずいぶん変わりました。もちろん、今は、コロナの影響で面会は制限されるのですが、4~5年前から、ソウル市内でも、大学病院などでは面会時間を制限するようになりました。
また、地方都市では、都市全体で一斉に制限を始めたところもあります。入院患者の面会時間は、平日は夕方の2時間、土曜日曜は、昼間2時間と夕方2時間というところが多く、簡単に言うと、日本のようになっています。
保護者はいつでもOKというのが一般的
保護者証とか、面会証を首からぶらさげなければならない病院も増えています。
また、病室には、看病人もいますから、患者が6人でも、だいたい、いつも、その2倍以上の人がいます。それでも、以前に比べるとだいぶ静かで、落ち着いて入院できるようになりました。
4 医者も看護師も白衣は少なくなった
最近の医者や看護師は、必ずしも白衣ではありません。上に白衣をはおっていても、中の手術服は、青とか紫とか、自分の好きな色のものを着ています。
テレビドラマにも医者はたくさん出てくるので、ご存知の方も多いかと思います。
水色とか薄いピンクとかが最近の主流
特に小児科では、白衣は子供に威圧感を与えて怖がらせてしまうので、青とか緑とかで、子供の気持ちを落ち着かせています。
5 韓国の医者はとても親切
もちろん、医者としての実力は必要ですが、医者も客商売です。態度が横柄だったら、その病院は潰れます。
ただ、大病院の有名な医者の中には、患者が殺到して、あまりに忙しすぎるのか、患者の質問にいちいち答えたくなさそうな態度の医者も、いることはいます
小児科の医者は皆明るい
小さな子供に接するので、怖がらせないように頑張って明るく接します。中には、保育園の先生かと思うくらい、明るく、歌を歌ったり口笛を吹いたり、子供を楽しませながら診察する医者もいます。
韓国では、小児科の医者は笑顔のイメージです。笑顔がなくて暗い雰囲気だと子供が怖がるので、その医者には誰も行かなくなります。。
6 韓国で病院と言ったらソウルの『ビッグ5』
大きな病気にかかったり、入院しなければならない時は、信頼できる病院がいいですよね。
ソウルには、韓国全土から患者が集まる大病院が5つあります。それをビッグ5と言います。
ドラマにもよく出る一番大きな病院は「ソウルアサン病院(서울아산병원)」
自動車で有名な現代(현대・ヒョンデ)グループが作った病院で、2680病床あります。とても巨大で、世界の病院トップ100にも入りました。チャムシルの漢江(ハンガン)そばにあります。
2番目が「サムソンソウル病院(삼성서울병원)」
サムソングループの地上20階、地下5階の巨大病院です。そして、
延大セブランス病院(연대세브란스병원)〔延世大学(ヨンセ大学)医学部付属病院〕、
ソウル大病院(서울대병원)〔ソウル大学医学部付属病院〕、
ソウル聖母病院(서울성모병원)〔カトリック大学医学部付属病院〕のいつつです。
どの病院も、最近建て替えたので、きれいで、そして巨大です。韓国人は、大きくてきれいな病院を好みます。
もし韓国で何かあったら『ビッグ5』のどこかに行ってください
日本語通訳もいるから安心です。ビック5の入院患者は韓国中から患者が集まるので、どこも60%以上がソウル以外から来ています。もちろん、外国人の誘致も積極的で、通訳がいます。
7 担当の医者は何度でも変更可能
総合病院とか、大学病院、あるいは、大きな専門病院には同じ診療科に医者が何人もいます。
最初に自分の担当になった医者が不親切だったり、なんか頼りなかったり、あるいは、病気などが思うように改善しない時、韓国では、病院に「医者を替えてほしい」と言えば替えてくれます。インターネットなどで調べて、はじめから「○○先生にしてほしい」と言ったり、一番人気のある先生は誰か聞いて、その先生を指名したりします。
日本では同じ病院で医者を替えてもらうことはしない
聞いたところでは、アメリカでも、ヨーロッパでも「担当の医者を替えてくれ」と病院に言うことはないそうです。それ以外の国は知りませんが、少なくとも先進国では、最初に決まった担当医でずっと行くのが普通みたいです。
でも、韓国では、客が替えてくれと言うのに替えてくれなかったら他の病院に行ってしまうし、サービス悪い病院になってしまうので、普通、希望通りに替えてくれます。
8 同じ医院(病院)に院長が2人も3人もいる
韓国では、医院に行くと院長がたくさんいることがあります。この医院では3人とも院長です。
この医院は体外受精専門の産婦人科なのですが、3人は以前勤めていた病院からいっしょに独立しました。医者が大学病院などから独立して個人の医院を設立することはよくありますが、病院は設備費用などが高額なので1人で全額負担するのはとても大変です。といって設備の費用を削ると顧客である患者が来てくれません。病院は医者も大事ですが最新設備も大事です。
また、1人でスタートするより3人でスタートすれば、はじめからある程度の顧客数が見込めるので、受付や看護師などのスタッフを雇う費用も割り勘できてお得ですし、ある程度名前の知られた3人の名前を看板にすれば信用度も増します。
しかし、いっしょに設立するのに、誰かを院長にして残りが副院長となると医者の間で不公平が生じます。そのため
「共同院長」といって2人とか3人とかが全員院長ということが韓国ではよくある
韓国人は合理的なシステムだと思っていますが、外国人には不思議に見えるみたいです。
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監修者
<出身大学>
新丘大学家庭教育学部
<略歴>
ソウル出身。韓国語教育が専門分野。2006年に来日し、2011年より韓国語教室ハングルちゃんの共同経営者兼主任講師。 生徒たちが積極的に参加しやすい雰囲気を作り、能力を最大限に引き出す指導スタイルが評判。
内田 昌弘 (うちだ まさひろ)
韓国語教室ハングルちゃん代表
<資格>
通訳案内士韓国語(国家資格)
日本語教育能力検定
高等学校と中学校教員1種免許状(数学)
<出身大学>
京都大学農学部卒業
<略歴>
東京生まれ千葉県育ち。韓国在住(歴)15年、1996年から2006年までの11年間は、韓国最大規模の語学学校(YBM学院)にて日本語部門の教授部長。2011年6月に韓国語教室ハングルちゃんをスタート。